ビッグモーターほどの悪事はやっていない?
ビッグモーターをめぐっては、顧客や取引先である損保会社、下請け業者への信じがたい悪行も次々と明らかになっている。同社は、顧客から事故車の修理を請け負った際に、故意にゴルフボールを入れた靴下を車体に打ちつけて傷を付けたり、ドライバーで車体に引っかき傷を付けたりし、損害保険会社に自動車保険の保険金を水増し請求していたことが広く知られている。これ以外にも、店舗の営業担当者が顧客にローンの仮審査だと説明しながら、勝手に信販会社の本契約を進め、顧客が慌てて解除すると担当者が顧客の自宅に押し掛け、2時間にわたり暴言を浴びせるということも行われていたことが発覚(3日付読売オンライン記事より)。
車の購入者が代金の約100万円を現金で支払おうとしたところ、店舗の営業担当者から総支払額は変わらないので1年だけローンを組むよう説得され、結果的に120万円を支払う羽目になったり、新品タイヤなど30万円相当のオプションを無償で付けるのでローンを組むよう言われた客が、約束を反故にされオプション分を有償で契約させられたケースも(11日付「AUTOCAR JAPAN」記事より)。ビッグモーターに売却した車について冠水した過去はないにもかかわらず、冠水した跡があるとして突然700万円の賠償請求訴訟を起こされたり、店舗で売却のキャンセルを告げると店長から罵声を浴びせられるようなケースもあったという(11日付「弁護士ドットコムニュース」記事より)。さらには、中古車の一括査定サイトでは、登録した顧客のメールアドレスや電話番号などを入手し、その顧客になりすまして勝手に登録を解除する一方で顧客に接触し、他の中古車買取業者との価格競争を回避する「他社切り」という行為まで横行していたという(9日付「FNN」記事より)。
中古車業界関係者はいう。
「ビッグモーターがやっていた行為というのは、業界関係者でも驚くほど酷いレベル。グッドスピードも保険料の水増し請求をやっていた疑いがあるとのことだが、さすがにここまで悪質なことはやっていないだろう。ただ、事業内容やHPのデザイン、さらには社名の付け方など、ビッグモーターに似ている部分もあり、パワハラやノルマなど社風的な面はさておき、ビジネスモデルという観点で最大手のビッグモーターのやり方をそれなりに研究して参考にしていたように感じる」
中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏も7月18日付当サイト記事で次のようにコメントしていた。
「自動車保険が適用される修理の際に、整備工場が修理見積を多少高めに算出することは、ないといえば嘘になるかと思われます。当初の想定より部品代が高くついたとか、問題ないと考えていた箇所も修理が必要だったなどという正当な理由で金額が上がることも当然ありますし、そうなることをあらかじめ見越して見積額を高めに設定するという場合もあります。ただそれは、あくまでモラル的に容認される範囲内であって、保険会社も暗黙の了解というか、忖度できる程度のことは大目に見てくれるという認識がお互いにあるでしょう。
ビッグモーターの件について、大きな問題と考えられるのは、故意に損傷を広げて請求額を上げるなどの悪質な不正行為が全社的に行われていたことです。個人経営や中小企業の整備工場が、さすがにそこまでのことはやらないと思います。不正が明るみになった時のリスクも考えるし、保険会社との信頼関係もありますから」