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レースのために生まれた狼、緒戦の苦闘
ショートホイールベースの2ドアハードトップ版KPGC10登場
レースのために生まれた狼、緒戦の苦闘
PGC10「スカイラインGT-R」は、スカイラインGT(GC10)が積んでいた日産L20の代わりに、旧プリンスS20へとエンジンを載せ替えただけのクルマではありません。
あくまでレースに勝つためのマシンですから、レースに必要ない装備はオプションとして軽量化、足回りを固め、ステアリングギア比のクイック化など、参戦するうえで改造に制約がある部分は最初から手が加えられたエボリューションモデルでした。
見た目で目を引くのは、レース用のワイドタイヤを履くため3代目C10型スカイラインの特徴だったリアの「サーフィンライン」を潔く断ち切り、広げられたタイヤハウス。
グロリア用の直6SOHCエンジンG7を積むため、フロントを強引に延長した先代スカイライン同様、「羊の皮」など被ることなく、それは最初から「狼」の姿だったのです。
そこまでして迎えたデビュー戦、1969年5月のJAFグランプリレースでは勝利以外許されなかった日産ワークスですが、なんとここで宿敵、トヨタ1600GTの後塵を拝してのゴールという大波乱!
結局は1600GTの走路妨害が認められてGT-Rの勝利となったものの、オフィシャル(係員)に日産系クラブの関係者が多いという灰色の状況で、なんとも後味の悪い結果となりました。
もっとも、日産、トヨタ両ワークスともに大量のマシンを参戦させては周回遅れにブロックさせたりと、どちらもクリーンな速さを競う以外のことに一生懸命でしたが、メーカーが市販車ベース車のレースや競技へ変に首を突っ込むとロクなことがないのは、昔も今も同じ。
ショートホイールベースの2ドアハードトップ版KPGC10登場
初戦でミソがついたとはいえ、マトモに走れば高性能で速いスカイラインGT-Rではありましたが、基本的に3代目C10系スカイライン自体が大衆向け1.5〜2リッター級4ドアセダンです。
先代S50系と違い、最初から直6エンジン搭載を考慮していたとはいえ、小型軽量ハイパワーマシンが出てくれば、重量やホイールベースの長さからヒラヒラ軽やかに走るわけにはいきません。
そこで1970年10月、ベース車にショートホイールベースの2ドアハードトップが設定されると、スカイラインGT-Rも2ドアベースのKPGC10型へ更新、さらに太いタイヤが履けるようリヤには黒いオーバーフェンダーも取り付けられました。
なんとなく「高性能エンジンを積んだスポーツセダン」という雰囲気で迫力に欠けた4ドア版PGC10と異なり、、見るからに戦闘力が増した精悍な姿は「これぞGTマシン」という趣であり、「スカG伝説」はここにひとつの完成を見た、と言ってよいでしょう。
2代目KPGC110(ケンメリ)にせよ、RB26DETTを積むBNR32以降の第2世代スカイラインGT-Rにせよ、ベース車からワイド化して迫力を増すスタイルは踏襲されています。