太陽光での自家発電は蓄電池を活用

ーー直接、事業とは関係ないかもしれませんが、自家発電として太陽光発電を導入する際により活用するためのノウハウがあれば教えていただけますか?

塩出:太陽光発電はそもそも夜間の発電ができません。

昼間発電した余剰電力を(電力事業者へ)売るよりも蓄電池に充電したり、エコキュート(電気給湯機)を使って電気を熱に変えておくなど、電力の自家消費率をあげることが大切です。売電価格よりも買電価格の方が高いので、夜間に充電した電気や熱を使うことで、経済合理性も高くなります。

ーー給湯機を蓄電池として扱う……もしかして、EV(電気自動車)も蓄電池となるのでしょうか?

塩出:なります。Natureでは「EV Plug」という製品を開発予定です。エネルギーマネジメントの中核となるEVの充電タイミングをコントロールするデバイスです。そしてそれは、家庭で発電した電力の自家消費率を高めることと、ユーザーの電気代などの削減につながると考えています。

無理のある‟大きな一歩”ではなく、自然な歩みを

ーー限りある資源を無駄にしないように活用するアイディアですね。では、さまざまなアイディアを心に秘めていて、これから一歩を踏みだそうとする若い世代にメッセージをいただけますか。

塩出:まずは自分でもできそうな小さなことから始めることを心がけたらどうでしょうか。気負ってしまうと、どうしても‟大きな一歩”を自分に強いてしまいます。人間のナチュラルな反応や感覚を無視して、意思で乗り切ろうとした結果、僕は不眠などの不調に陥った経験があります。無理をしていたんですね。そこで、瞑想や積極的に身体を動かすことを取り入れた習慣の変化で改善できました。

ーー塩出さんがおこなっているという朝のルーティンですね。毎朝ギターの練習をされているそうですが……


塩出さんの朝活ルーティン

塩出:ヨットで世界一周をすることが、僕の人生の目標のひとつなんです。そのときにいろんな国の人と一緒に歌が歌えたら、楽しそうですよね。だから世界中で知られている10曲を、コードも歌詞も見ないでギター片手に歌えることを目標にしています。1曲目に選んだのは「Let It Be」(ザ・ビートルズ)。Let It Be、‟あるがままに”って僕自身の考え方にもフィットしていて「これしかない!」1曲でした。

ーーほかにはどんな曲を?

塩出:10曲すべてはまだ決まっていないんです。ちなみに2曲目はエリック・クラプトンの「Tears In Heaven」、3曲目は「Stand By Me」(ベン・E・キング)でいこうと思っています。

ーー夢の実現が楽しみですね。「気負わずに」という心の部分にプラスして、どんな行動をとるべきでしょうか?

塩出:誰でも今すぐにでもできるアクションは、意識的に想いを共有できる同志と時間を過ごすことですね。僕がハーバードビジネススクールに留学する前にライフネット生命の創業メンバーである岩瀬大輔さんから「在学中に起業したいならその目標に向かって行動している仲間と一緒にいることが大事だ」と言われました。つまり、自分と一番近い志を持っている人と一緒にいることが、夢に近づくための一歩ということですね。

実際、ハーバードビジネススクールには事業をおこしたい人だけでなく、金融業で成功したい人などみなそれぞれの目的で学びにきていました。僕の場合、実際に起業を目指している人たちのコミュニティにいたことで、刺激を受けて変わっていきました。

ーーどんな影響を受けましたか?

塩出:アメリカ人の起業家で、「RapidSOS」というスタートアップの創業者とビジネススクールで知り合いました。とにかくプレゼンテーションがうまい。ぎゅっと伝えたいことを凝縮して、わかりやすく届ける。優秀な学生たちのなかでも特に光っていました。

彼はビジネススクールのコミュニティも主宰していて、リーダーシップのスタイルがとてもナチュラルだったことも忘れられません。今までいろんなキャリアで実績をあげてきている人間が集まっている中で、彼はフラットでかつナチュラルに、サラッといろんな人を巻き込んでコミュニケーションを取っていくんです。

起業仲間からは、彼だけではなく、それぞれから色んな良いところを常に感じていましたね。