入居者の孤独死……葬式、その後まで面倒をみるのが大家の責任

――とはいえ、一般の大家さんに比べて割高の家賃を取っています。かなり儲けられたのではないですか。

春川氏「副業とはいえビジネスですから採算性は意識していますが、儲かっているかといわれると……。うちは兵庫県神戸市の昭和の団地1室を月額家賃5万2000円で貸し出しています。一般の大家さんなら月額4万数千円程度で貸し出す物件です。ここだけをみると、すこし儲かっているように見えるかもしれません。でも、毎日が戦場みたいな生活です。入居者がトラブルを起こして警察から呼びされて身柄を引き受けたりといったこともあります」

――そうは言っても傍から見れば、月額家賃4万数千円の物件を月額5万2000円で貸し出しているのは、とてもいい商売だと思います。

春川氏「そう見えるでしょう? でも、うちはまず敷金、礼金、保証人の類は一切なし。私との面談でOKかNOか、そこで判断させてもらっています。無断退去されると採算割れ、赤字ですね」

受刑者や破産者等、家を借りられない人に部屋を提供…「エクストリーム大家」の実情
(画像=エクストリーム入居者が退去した物件。約10年の入居中、まったく清掃をしていないという。このままの状態でもワケ有りの人であればすぐに入居者が決まるそうだ(春川賢太郎氏提供)。、『Business Journal』より引用)

――過去に、無断退去された入居者の方もいましたか?

春川氏「ひとり居ました。無断で転居と思われるケースでした。しかし、それよりも無断でこの世からあの世へ、三途の川を渡っていた……という数のほうが上回りますね」

――入居者の孤独死ですか?

春川氏「はい。異臭がすると近隣から連絡が来ましてね。それで家に入ると、そうした状況でした」

受刑者や破産者等、家を借りられない人に部屋を提供…「エクストリーム大家」の実情
(画像=同じくエクストリーム入居者が退去した物件。カビだらけで異臭を放つこの物件は、神戸市を代表する大手企業の管理職だが、一般の不動産物件を借りられないワケ有りの人物が借りていたという。居は人を表すといったところか(春川賢太郎氏提供)、『Business Journal』より引用)

――そうした入居者が孤独死した場合、大家さんとしてはどうされるのですか。

春川氏「当然ですが、まずは警察や消防に通報します。それから身寄りのある人であればご親戚筋を探して連絡します。身寄りがまったくない方であれば、簡素で申し訳ないけれども、葬儀まで出させていただきます。できる限りのことはさせていただくというのが、エクストリーム大家としての責任だと私は思っています」

――大家さんの立場で、そこまでしなければいけないものなのでしょうか。

春川氏「どういう亡くなり方でも、うちの物件の入居者がお亡くなりになられた場合、死亡届の届出人義務者は大家なんです。これは私のようなエクストリーム大家に限らず、一般の大家さんでも同じです。あまり知られていませんが大家とは、それだけ人に対して責任を持つ仕事なんです」

「元家族」という言葉が日々出てくるエクストリーム層

――春川さんの物件の入居者は、身寄りがないと思われる方が多いですね。

春川氏「基本的に、ワケありの人ばかりです。ただ、よく調べると実は身寄り、つまり家族がいることがよくあります。それは、家族もしくは入居者本人が、なんらかの事情で連絡を絶っている、すなわち絶縁しているということがほとんどなんです」

――それが書籍のなかでも出てくる「元家族」ですね。

春川氏「そうです。この元家族に対して、こちらは入居者の家族だと思って連絡をしますが、連絡を受けたほうはそう思っていないんです。血縁こそあるけれども、忌み嫌っている人物の関係者という扱いです」

――具体的にはどんな扱いや対応をされるのでしょうか。

春川氏「うちの入居者で亡くなった方がいまして、その方の娘さんに連絡を取りました。『あなたのお父様の大家です。お父様がお亡くなりになりました』と伝えたところ、娘さんは間髪入れずに、こう仰ったのです。『その方はうちとは、なんの関係もございません。これで失礼致します』と。それでこちらからの電話をガチャ切りです。この亡くなった入居者は絶縁ヤクザでした。恐らく、過去にカネ関係で相当、ご家族の方は苦労を強いられたか、迷惑をかけられたのでしょう」

――入居者が賃貸物件で大麻を育てていた疑惑で警察沙汰になったという話も、本書では紹介されていました。

春川氏「エクストリーム大家をやっていると、どうしても薬物関連の問題を起こす入居者もいます。大麻などを育てられると、もう家の中をリフォームしないと次の方に貸せません。そういう意味では、収益性を追求する商売というよりも、社会事業という趣きのほうが正しいかもしれません」