目次
『アーネスト・コール~ハウス・オブ・ボンデージ』展
世界を動かしたコールの写真
『アーネスト・コール~ハウス・オブ・ボンデージ』展

私が2023年6月にFoamを訪れた際は、『アーネスト・コール ~ハウス・オブ・ボンデージ』展が開催されていました。アーネスト・コール (1940-1990) は、南アフリカ初の黒人フリーランス写真家で、アパルトヘイトの実態を命がけで撮影し、精力的に報道したことで賞賛されました。
今回の展覧会では、1967年に出版されたコールの写真集『House of Bondage(ハウス・オブ・ボンデージ)』に掲載された写真のほか、アメリカ移住後に撮影された未発表の写真、2017年にスウェーデンの銀行の金庫室で発見された6万点のネガやコンタクトプリントなどが展示されています。
私は今回初めてコールの写真を目にしましたが、人種差別を受けた当事者が内側から撮影した人々の表情や光景には心に迫るものがありました。





コールは反アパルトヘイト運動の指導者や黒人ジャーナリスト、ミュージシャンたちとの人脈を広げるうちに、アパルトヘイトの実態を記録して伝えようという意志を固めました。タウンシップや鉱山、学校、病院などで、当局に見つからないよう細心の注意を払いながら、自由と尊厳を奪われた黒人の生活を大量に撮影し、1966年に南アフリカからの脱出を企てます。
世界を動かしたコールの写真

コールは1966年にニューヨークに向けて秘密裏に出国し、その翌年には一連の写真が『House of Bondage』として出版されました。写真集は大きな反響を呼び、アパルトヘイトに世界の注目が集まりました。南アフリカは『House of Bondage』の発行を禁止し、コールは国外追放となりました。
コールはその後二度と南アフリカの大地を踏むことなく、病気により49歳の若さでこの世を去りました。彼の作品は今なお人々の心に訴えかけ、ヨハネスブルグの「アパルトヘイト博物館」をはじめ、ケープタウンやニューヨーク、ロンドンなどで展覧会が開催されています。2022年には『House of Bondage』がニューヨークのAperture社から再出版されました。