共産主義は貧乏になる。

斎藤氏の三つの主張 ABEMA TIMESより
筆者が書いたような配給によって生まれる面倒で膨大な仕組みは、自由経済・市場経済に対して「計画経済」と呼ばれる。かつてのソ連(現在のロシア)が採用していた。
斎藤氏は脱成長の仕組みを共産主義ではないのか?貧しくならないのか?と問われて「コミュニズムだし、似ているところもある。ただ、今の資本主義みたいな社会ではなくなる」と答えている。
世界中で共産主義国家でなおかつ計画経済を今も維持している国がどれだけあるかを見ればすでに答えは出ている。
執筆時点で共産主義国家は中国、キューバ、ラオス、ベトナム、北朝鮮の五カ国だ。中国は国家による関与は様々にあると思われるが、少なくとも株式市場が存在する水準までは資本主義が発達している。これはベトナムも同様だ。
他の国も北朝鮮ですら市場経済を部分的に導入しており、それでも共通しているのは「極端に貧しい」ということだ。豊かさの指標となる一人あたりのGDPは中国を除いていずれも下から数えた方が早く貧困国家ばかりだ。
番組で貧乏にならないんですか?という問いが出たのも当然で共産主義的な経済体制がうまくいかない事はすでに常識と言っていい。今から先進国の日本が部分的にでも共産主義的な経済政策を取ることは冗談のような話と指摘した通りだ。
また別のインタビューでは「ソ連や中国は社会主義というより、国家・官僚主導型のトップダウンの資本主義のようなものです」「マルクスの考えたコミュニズムと同一視するのは間違いだと分かってほしい」と、共産主義の代表のように見られるソ連や中国は自身が目指すモノとまったく違うと説明している※。しかし斎藤氏が主張するような厳しい所得制限や生活必需品すべての公共財化を行っている国は共産主義国家でもない。
経済成長の著しい中国は一見すると成功しているように見えるが、トップダウンの資本主義、つまりは計画に従わない国民を排除しなければ成り立たない。そこには言論統制や弾圧がセットであることは今更説明するまでもない。計画経済である以上は計画に反対する国民は排除しなければ成り立たないからだ。これは経済体制が社会主義でも資本主義でも変わらない。
「計画」を決めた通り実行するためには自由を大幅に制限する必要があり、そこには強制力が必要になる。斎藤氏は脱成長のためには自由の制限が望ましいと考えているのか。
それでもやってみないと分からないじゃないかという人に向けた教訓として、実際に冗談のような計画経済を導入して経済が破綻した国・ベネズエラがある。しかも昔の話ではなく2016年のエピソードだ。
※引用・参照 経済思想家・斎藤幸平「今こそマルクスの復権を」:資本主義と決別、「脱成長コミュニズム」が世界を救う nippon.com 2023.02.27
「冗談みたいな世界」を実現したベネズエラは地獄になった。ベネズエラ在住のブロガー・ライターの野田加奈子さんのブログに掲載された「お金で価値が測れないディストピア」という記事がある。
社会主義的、共産主義的な経済政策によってベネズエラで起きた理解不能な出来事を以下のように説明する。価格を固定して市場経済を否定したことで起きた問題だ。
『想像しやすいように日本の食べ物に当てはめて考えてみましょう。
ベネズエラで今起きているのは、米10kgが300円で売ってる一方で、豆腐が3000円、コンビニアイスが1個3万円といった意味不明な値段になっている状態です。
米は主食なので政府により10kg300円と値段が決められています。安いのはありがたいけれど、常にスーパーで見つかるわけではありません。するとどうなるか?みんな、たとえ家に予備があったとしても見つけた時に買えるだけ買い溜めるようになります。なので店で売り出されるとすぐに売り切れです。
マドゥロ政権は、この問題を解決しようと配給制を導入しましたが、もちろん結果は同じです。配給制にしても、必要な物が明日は見つからないかもしれないとなると、買えるだけ買ってストックする。当然でしょう。
スーパーに向かって全力疾走するベネズエラ人のビデオを見たことがありませんか?早く行かないと売り切れて買えないのです。