研究の限界は?

たしかにBCGワクチンの接種が、新型コロナに対して9割感染予防効果があるのなら、これはすごいことである。しかし、すべての研究に言えることだが、研究には限界がある。

その一つは、今回の研究の対象が「1型糖尿病患者のみ」ということだ。感染症に対し比較的脆弱な層として、また通院機会が多く研究対象として採用しやすい事もあってこの対象に限定されたのだろう。しかし、やはり対象が限定されていることは、広く国民全員に一般化する際の障壁と言わざるを得ない。

また、対象の人数が144人という少人数に留まっていることも言及されるべきだろう。

ファイザー社製の新型コロナワクチンは、数万人を対象にRCT(ランダム化比較試験)が行われ、その効果が検証された。それと比較すると研究規模の小ささが指摘されることは免れないところだ。

新型コロナワクチンとの比較

以上のような限界があるものの、もし本当にBCG接種が効果的だとしたら、これは大きな事件である。

なぜなら、日本人は殆どがBCGを接種済みだからである。日本人は多くがすでに新型コロナに対しては免疫強化済みということになるのだ。しかもその効果は数十年保たれるという。

一方で新型コロナワクチンの効果は約6ヶ月程度と言われており、何度も追加接種を受けなくてはいけないことはすでに周知のとおりである。

しかも特定のウイルスに対してだけでなく、自然免疫の強化(訓練免疫)なので多くの感染症に対し全般的に効果を発揮するということだ。これが本当ならBCG接種にとって明らかに有意なアドバンテージと言っていいだろう。

さらに、新型コロナワクチンはmRNAという新しい技術で作られたワクチンであり、長期的な副作用を心配する声は根強く存在する。その意味でBCGワクチンは、非常に古くからある古典的はワクチンであり、長期的な副作用についての心配は非常に限定的と言って良い。