コベントリーの課題:5バックの限界
堅守速攻はロビンズ監督の得意とする戦術でもある。昨シーズンは機能していたものの、攻撃はカウンターに頼ることになり守備の負担も大きい。事実、昨シーズンのプレミア昇格をかけたプレーオフでカウンターの決定機をものにできず徐々に劣勢に立たされ、あと一歩のところで昇格を逃してしまったのは、現地のサポーターにとって苦い記憶となっている。
レスターとの試合ではバーディをはじめとする相手のスピードある攻撃を防いだが、後半に入ると中盤の疲労は色濃くなり、ディフェンスラインはずるずると下がりスペースを支配された。しかしロビンズ監督はフォーメーションを変えることなく選手の交代にとどめる。新加入のエヴァイクは右サイドに入るが、周囲との連携が合わずボールを奪われるとピンチを招く場面も見られた。
一方、コベントリーのクラブ史上最高額となる900万ユーロの移籍金で加入したライトは、開幕前日の合流にもかかわらず個の力で状況を打開。ポストプレーや、ハーフウェーラインからドリブルで駆け上がりシュートまで持って行く姿などは圧巻だった。
しかし、これらの選手が代わったところでシステムは変わっていない。中盤のスペースをMFベン・シーフとケリーの2枚でケアしなければならない状況が続くと、レスターの攻撃への対応に後手を取るようになり、その結果逆転を許してしまった。
5バックは昨年カタールW杯で日本代表も採用したが、カウンターがはまれば効果的な戦術となる反面、守備に追われる時間が増えるため選手の負担は大きい。今回のコベントリーも先制後、ディフェンスラインを高く保てず中盤をコンパクトにできなかったことが敗因のひとつだろう。
坂元とコベントリーの相性は?
坂元は9分間のアディショナルタイムがある中、トップ下のパルマーと交代で出場。そのまま同じポジションに入るが、引いて守るレスターを相手に背中を向けてボールを受けるので精一杯となり、前を向いてスペースに走り込む得意のプレーは見られず。持ち味の切り返しやスピーディなドリブルは一度しか披露できなかった。その後も相手選手との競り合いで負けたり、周囲との連携もスムーズにいかなかったりと課題が多く、イングランドデビューはほろ苦いものとなった。
しかし、小柄な坂元に大柄な相手ディフェンダーとの競り合いで勝つことを期待する方が無理な話だ。コベントリーが坂元を獲得したのはフィジカル面での強さではないだろう。昨シーズンはロングボールを供給しても得点に繋げられないなど、フィニッシュの精度で課題があったコベントリー。坂元には速攻のチャンスにスピードのあるドリブルで駆け上がり、相手を翻弄する切り返しで決定機を演出することが期待されているのは明らかだ。
守備重視のコベントリーではあるが、スピードのある坂元と相性が悪いわけではない。今回の試合ではトップ下に入ったが、ロビンズ監督も坂元の適正が右サイドであることは承知の上だと思われる。今後は[3-4-3]の布陣で右シャドーに入り、ワントップにライトなどのポストプレーに優れた選手が入れば相手にとって危険なプレーが増えそうだ。
ロビンズ監督はプレシーズンから新加入選手を徐々に馴れさせていく方針を示していたため、開幕戦で新選手が3人も起用されたのはやや驚きだった。しかし、試合後のインタビューで「相手はプレミアリーグのチームだった。シーズンはまだ始まったばかり。リーグは1試合だけでは決まらない」と語っていたように、長期的な視点でのチームづくりを考えている。
次節はホームで古豪ミドルズブラとの対戦を控えているコベントリー。レスターとの初戦で浮き上がった課題が解消されれば、坂元もより活きたポジションでのプレーが増え、初白星を獲得することができるだろう。