さて、突然ですが質問です。

男性:29.0% 女性:19.2%

この数字の意味、分かりますか? 国立社会保障・人口問題研究所が発表した「生涯未婚率」の予測です。それによると、2035年には50歳の時点で一度も結婚していない人の比率が、男性で29.0%、女性で19.2%になるといいます。

2015年の生涯未婚率は男性が22.1%、女性13.4%なのですが、今後もさらに上昇を続け、2035年には男性のおよそ3人に1人、女性の5人に1人が「結婚しない」社会となることが予測されているのです。

生涯未婚率の上昇は、もはや社会問題といっても過言ではありません。今回は「結婚」と「婚活」について、様々な角度から考えてみましょう。 

生涯未婚率の上昇と非正規雇用問題

生涯未婚率の上昇を招いている要因は様々です。もちろん、本人が自分の意思で結婚しないと決めているケースもあるでしょう。でも「本当は結婚したいのに、結婚できないケース」もあります。その大きな原因の一つとして指摘されるのが、非正規雇用問題です。

2012年に厚生労働省職業安定局が発表した資料によると「初職が正規雇用」の30代前半の男性で、結婚している人は50%を超えているのですが、「初職が非正規雇用」の男性は30%程度にとどまっています。ただ、女性は男性ほど雇用形態による違いは認められません。

非正規雇用問題は、若者の貧困問題をもたらしているとの指摘もあり、これが結婚率の低下を招いている可能性があります。

もちろん、「幸せはお金では買えない」との考え方もあるでしょう。決してそれを否定するつもりはありませんが、現実は過酷です。結婚して子供を授かり家庭を築くためには、やはり経済力が必要なのです。それは、正規雇用と非正規雇用の「結婚率の違い」からも読み取ることができます。 

理想的な結婚のタイミングとは?

国立社会保障・人口問題研究所は「結婚相手と付き合い始めた年齢」と「結婚するまでの期間」の平均も明らかにしています。結婚相手と付き合い始めた年齢の平均は男性が25.6歳、女性24.3歳。結婚するまでの平均期間は4.2年です。

ちなみに、国勢調査(2010年、2015年)のデータをもとに「未婚の男女が5年以内に結婚できる確率」を年齢別に見ると以下のようになります。

22歳男性:21.9% 22歳女性:31.4% 
26歳男性:34.6% 26歳女性:43.5% 
30歳男性:29.1% 30歳女性:35.5% 
35歳男性:17.8% 35歳女性:21.5% 
40歳男性:8.9%  40歳女性:9.3% 
44歳男性:5.2%  44歳女性:5.5%

男女とも「26歳がピーク」でその後は急激に低下しているのが分かります。上記2つのデータを考え合わせると、およそ「20代半ばでパートナー候補と出会えるか?」がキーポイントで、4~5年の恋愛期間を経て30歳という節目で「決断する」のが最も「結婚できる確率が高い」と考えられます。

子育てという点を考えても、働き盛りを迎える30歳前後で「結婚を決断する」のは理想的と言えるのかも知れません。子供は本当に可愛いものですよね。ただ、先に紹介した厚生労働省の資料に見られるように「非正規雇用」が原因で、理想的な結婚のタイミングを逃しているとすれば、本当に残念なことと言わざるを得ません。 

「最適停止問題」で正しい選択ができる?

ところで、先に「20代半ばでパートナー候補と出会えるか?」がキーポイントであると指摘しましたが、結婚するうえでの「ベストパートナー」とはどのような人なのでしょうか? もちろん、判断基準は人それぞれなので一概には言えません。

ただ、数学や統計学の世界では「ベストパートナー」を見つけるための判断基準が提示されています。これは「最適停止問題」の一種で数学的・統計学的に正しい選択の方法とされています。

難しい話はさておき、結論を先に述べると、(1)初めて交際した人から37%までの人とは結婚しない、(2)37%以降に交際した人で、(3)かつ、37%以前の人よりも素晴らしい人……が「ベストパートナー」となります。

「最適停止問題」の一種には結婚問題だけでなく、秘書問題もあります。秘書問題に置き換えて、より具体的に説明すると以下のようになります。

1人の秘書を雇いたい時に、10人の応募者がいました。37%、つまり「最初の3人」までは見送り、4人目以降で「最初の3人」を超える人を採用しました……これが最適停止問題に基づく、最適な秘書の採用となります。 

結婚は人生最大の「判断」を求められる

私自身は最適停止問題を実践して結婚したわけではありませんが、何事も「判断基準」を持つことは大切だと考えます。結婚は人生最大の判断を求められますからね。なるべく具体的な判断基準が必要です。

ただ、秘書問題の「最初の3人」という判断基準は確かに具体的なのですが、同時に様々な疑問も湧いてきます。

たとえば、1人目が最高の人だった場合、4人目以降に「1人目」を超える人には出会えません。また、10人のうち最初の3人が最低ランクになると、必然的に4人目を採用する可能性が高まります。5人目以降にもっと素敵な人に出会えるチャンスを逃すことにもなりかねません(※秘書問題では、面接時にその場で採否を決定し、不採用者をあとから採用することはできない、とのルールがあります)。

数学的・統計学的に正しいとされている「最適停止問題」も100%万能とはいえません。 

あなたのパートナー候補は何人ですか?

「最適停止問題」を婚活に応用する際の最大の問題点は、秘書問題のように候補者が何人いるのか分からないことです。候補者の数は、自分で決めなければなりません。100人の人もいれば、10人の人もいるでしょう。人によって「最初の37%」の人数も変わってきます。

最近は、婚活アプリを利用している人も増えているようです。なかには会員数が数百万規模の婚活アプリもありますね。冒頭でも述べたように「生涯未婚率」の上昇が予測されている昨今ですが、それでも多くの人が結婚を望んでおり、ベストパートナーを求めています。

巷では、婚活アプリを毛嫌いする人もいるようですが、私はそうは思いません。「婚活×IT」でベストパートナーとめぐり逢えるのであれば、それで「生涯未婚率の上昇」という社会問題の解決に少しでもつながるのであれば、素晴らしいことではありませんか。

ただ、婚活アプリでは「パートナー候補」がたくさんいて迷ってしまうこともあるでしょう。そんなときは100%万能ではありませんが、数学的・統計学的に正しい選択方法とされている「最適停止問題」を活用してみるのも良いかも知れません。

文・長尾義弘(NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP)/ZUU online

【関連記事】
子どもの「金融教育」は何歳から始めるのがベスト?
40代に始めておきたい「相続対策」 早めにやっておきたい2つのこと
子供1人の教育費は進路によって3,000万円も違う 私立か公立か、留学するか……?
「子どものMBA費用を払う親」が増加傾向?なかには自宅まで売る親まで【初心者向け】ネット証券おすすめランキング(PR)