モータースポーツで苦戦するK20A specR

ホンダの「K20Aエンジン」とは?搭載している車やK20Cとの違いを解説
期待とは裏腹に基本性能が伸び悩み、改造範囲の狭いカテゴリーでは先代DC2/DB8に及ばなかった2代目DC5インテグラタイプR(画像=『MOBY』より 引用)

タイプRへ初搭載されたK20Aは、2001年の2代目インテグラタイプR(DC5・220馬力)と2代目シビックタイプR(EP3・215馬力)、そして一般ユーザー向け最後のタイプRと言える3代目シビックタイプR(FD2・225馬力)で終わりを迎えます。

FD2にはさらに無限チューンのシビックMUGEN RR(240馬力)があるものの、これはチューニングカーとして別枠に考えていいでしょう。

EP3同様、FD2と同時期にヨーロッパからわざわざ輸入した3ドア版シビックタイプR(FN2・201馬力)も、K20Zというちょっと別物のエンジンですから除外します。

DC5、EP3、FD2はいずれも国内モータースポーツの各シーンで活躍し、特に筆者がいちドライバーとして参戦していたジムカーナでは、2リッターのK20A搭載車が1.8リッターのB18C specRを積む初代インテグラタイプR(DC2・DB8)後継として大活躍しました。

ただし…コストダウンが理由と言われますが、当時のホンダはインテグラにせよシビックにせよ、4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションをやめてしまい、フロントはストラット式に変わっていました。

さらにK20Aは従来のB型エンジンとはエンジンの回転方向が逆になり、搭載位置も右側(右ハンドルだと運転席側)から左側へ変更、「運転席と逆側にエンジンがあるので、左右バランスがよい」というメリットがスポイルされています。

重量バランスはセッティングで詰められますし、何なら生産コストや効率面では右側エンジンの方が自然で設計も楽だったはずですが、サスペンション形式の変更は基本性能に大きく関わる部分で、どうにもなりません。

実際、かつてのジムカーナ主力クラス、改造範囲の広い「A車両」時代はK20Aのエンジンパワーにモノを言わせ、各種の新型タイプRへ勝利を味合わせる原動力にはなったものの、ほどなく改造範囲の制限された「N車両」が主力になると、アッサリ消えました。

チューニング次第でどうにかなるものの、その制約が大きければ初代DC2(3ドア)/DB8(4ドア)インテグラタイプの方が基本的な戦闘力は高く、ジムカーナではDC5やEP3など誰も乗らなくなったのです。

スーパー耐久などレースではまだ活躍できましたが、改造範囲が狭くて市販状態での性能が大きく左右するカテゴリーほど、いかにK20Aで大パワーを発揮しても無駄でした。

FD2シビックタイプRで開花したK20A specRの才能

ホンダの「K20Aエンジン」とは?搭載している車やK20Cとの違いを解説
(画像=『MOBY』より 引用)

高性能エンジンのポテンシャルを発揮すべく全てが注ぎ込まれ、それでいて300万円以下と安かった最後の「俺達のタイプR」、3代目FD2シビックタイプR

ホンダとしても、「市販車へ大きく手を加えねば話にならないタイプR」ではイケないと思ったのでしょう。

元祖4ドアタイプRのDB8インテグラタイプR4ドア直系、そしてDC5やEP3の後継をも一手に引き受け2007年に発売されたFD2型では、足回りこそ先代同様のフロントがストラット、リアがダブルウィッシュボーンだったものの、思い切ったセッティングを行います。

すなわち、通常の街乗りでは支障が出るどころか、明確に「不快」なレベルにまで締め上げたガチガチの足として、その代わりにサーキット走行やジムカーナ走行で実力を発揮するセッティングとしたのです。

「不快」といってもミニバンなど実用車に対してのもので、昔のナンバーつき競技車や改造車に乗っていればさしたる障害でもなく、むしろエンジンパワーをフルに使い切るにはこうでなければ、というのがFD2シビックタイプRでした。

肝心のK20A specRも、以下のようにDC5用からチューンされます。

単管ショートインテークマニホールドのストレート化、ヘッドポートの表面をなめらかに仕上げるNSX製法の採用等により、吸気効率を高めるとともに、エキゾーストマニホールドの集合部鋭角化、デュアルエキゾーストパイプのストレート化などによって排気効率も向上。最高出力225PS(リッターあたり112.5PS)、最大トルク21.9kgf・mというハイパフォーマンスを現実のものとした

ホンダ公式SPORTS DRIVE WEB「歴代VTECエンジン紹介 日常とサーキットの高次元融合・K20A」

これでジムカーナのステージにも帰ってきたFD2シビックRは、「4ドアセダンなんて鈍重で遅いんじゃないの?」という印象を覆すパワフルかつ軽快な走りを見せつけ、基本性能の高さをアピールしました。

しかも車両価格は283.5万円と、FK2以降に比べて安価!

ようやくエンジンのポテンシャルを発揮できる、しかも少し頑張れば買えるタイプRであるFD2は、2023年現在でも改造範囲のごく限られたジムカーナPN車両として現役であり、今も多くのユーザーがK20A specRの性能をフルに発揮しています。