日本における「クラシケ」

日本では、東京(コーンズ東京サービスセンター)と大阪(コーンズ大阪サービスセンター)の2か所に「クラシケ」のワークショップが存在していて、深い知識と卓越した技能を持つメカニックによって20年以上の歳月を経て、オーナーにとっては貴重で唯一無二の愛車に「クラシケ」プログラムの提供を受けることができます。
「クラシケ」の認定は各ワークショップの認定士がヒストリックカーをチェックしてイタリアの「クラシケ」部門に申請することで認定されるためクルマをイタリアに持って行く必要はありません。
認定自体の費用は数十万円ほどで、認定申請後に何も問題が無ければ数ヶ月で認定されますが、もちろん認定されるためには修理やオリジナルの状態に戻すのに部品を交換したりする必要があり、その費用は別途必要です。

認定時の重要なポイントは「ボディ、ルーフ、エンジン、ブレーキ、リアアクスル」の5つのうち3つ以上がオリジナルで正常に機能していることが必須です。
イタリアの「クラシケ」部門では、送られてきた写真により各部の状態とパーツのシリアルナンバーを確認することで認定を実施しています。

フェラーリが取り組むヒストリックカーの伝承プログラム「クラシケ」【自動車業界の研究】
(画像=「クラシケ」作業風景(FERRARI)、『CARSMEET WEB』より引用)

創業者エンツォ・フェラーリから受け継ぐ伝統

フェラーリでは1940年代から主要部品にシリアルナンバーを刻み、どのクルマにどの部品が使われているのかを管理しているとのこと、当時からそういった取り組みを実施しているのには脱帽ですが、かつての手書きのシリアルナンバーの中には創業者である故エンツォ・フェラーリ氏の直筆のものも存在していて、彼だけに使用が許された紫のインクがその証とのことです。

フェラーリのオフィシャルプログラム「クラシケ」の凄いところは、最初の市販モデル「125S」(1947年)の時代より保管されている図面から当時と同じ部品を製作して提供しているところにあり(現代技術を用いた方が安全のために良いタイヤの材質やバッテリーなどには現代の技術を取り入れているとのこと)、図面や各種記録の保管、製造技術とサプライチェーンの維持や代替施策、メカニックの高度な手作業(職人技)といった技術の伝承など、とてつもない労力と費用を要する極めて貴重な取り組みであることです。

さらに、時代が進めば進むほどにそれらの運用に係る労力や費用は増える一方ですので、フェラーリの取り組みは自動車の文化をリードする役割としても非常に大きく、ビジネスの側面ではオーナーが自身のヒストリックカーに愛情を注ぎ「クラシケ」プログラムに理解を示すかどうか? が今後を左右すると思われます。