大人の男であるなら、やはりバーを愉しみたい。そんな気持ちはあっても、初めてや不慣れな人も多いはず。プロのバーテンダーが初心者に指南する、バーでの過ごし方とスマートな飲み方とは。
目次
■マナーには何があるのかを見つける愉しさも味わう
■入店前|まずは第一歩
①服装は以前よりも自由?
②予算の目安はどれくらい?
③大人数では入れない?
④テーブルチャージの意味とは?
⑤お勧めの時間帯は何時頃?
【お話を聞いた人】
STAR BAR マスターバーテンダー
岸 久さん
昭和40年(1965)東京生まれ。平成8年(1996)に「IBA・世界カクテルコンクール」で日本人初の世界チャンピオンになる。平成12年(2000)12月、銀座1丁目に「STAR BAR GINZA」を開店。現在5店舗を展開している。日本ジン協会代表。
■マナーには何があるのかを見つける愉しさも味わう
何を求めてバーに行くのか? 例えば、ひとり考え事をまとめたくて。あるいは、ひたすらぼーっとしたいがために。一番は静かな雰囲気の中で美味しい酒を飲みたいからかもしれない。そのほかにも誰かとグラスを傾けながら話をしたいなど、様々な理由が考えられるが、そのどれもが正解だろう。
しかし、これらの答えに共通するのは、バーが“居心地のいい場所”“心が落ち着く場所”であるということだろう。今回、銀座で「STAR BAR」を20年間営み、多くの人々から愛され続けるオーナーバーテンダーの岸久さんに、まずバーとはどのような場所なのかを聞いた。
「お客様がバーを訪れる時のシチュエーションは様々ですが、総じて一日の区切りをつける場所として立ち寄られる方が多いと思います。同時に、バーでは自分勝手に振る舞っていいというわけではありません。その意味で堅い言い方をすれば、バーとは人生と向き合い、ご自分を磨く場ともいえるのです」
それは、バーが醸し出す雰囲気によるところが大きいが、バーテンダーの存在を抜きにも語れない。
「飲食店全般にいえることですが、例えば定食屋さん、ラーメン店さんなどは、店の主人の顔を見ることがあまりありません。では、良い店の基準は何かというと、ご自分に合った美味しい味かで決まってしまいます。しかし、バーは店に足を踏み入れてからカウンターに座り、お酒を口にし、店を出るまでの全ての場面で、バーテンダーとのやりとりなくしては成立しません。バーはお酒を間に置いた、人対人のやりとりで評価が決まってくるものなのです」
だからこそ、初めてバーに足を踏み入れる場合は、それ相応の知識を身につけておくことが大切になる。バーを知らない人は往々にして閉鎖的な空間で、独自のルールがあると思いがちだ。
「確かにルールはあります。しかし、それらに縛られていては、バーを愉しむことができないかもしれません。そのあたりが難しいのですが、バーは嗜好品的な存在でもありますから、国の文化の影響を受けます。その文化とは何かとか、ルールには何があるのかとかを見つけていく愉しさもこの機会に味わっていただければいいのではないでしょうか」
酒の場だからこそ羽目を外さず、常識の範囲内でスマートに振る舞うことも大切だ。お金をたくさん払ったから粋というわけではない。さりげない気遣いも散見されるスマートさ。岸さんに“見つけていく愉しさ”について語っていただいた。
■入店前|まずは第一歩
確かにバーにはルールやマナーがある。しかし実は、そんなにハードルが高いわけではない。むしろ様々な期待を胸に、その店のドアを開けよう。
①服装は以前よりも自由?
「昔はジャケット着用などの決まりがありましたが、最近では公共の場に近いホテルのバーでも、サンダルに寝間着は論外として、服装について堅苦しく言わなくなっています。町のバーはさらにフランクですから、カジュアルな服装で大丈夫。所詮、服装は個人の好みです。気になるようであれば、襟付きのシャツを着るのがいいでしょう」
「このくらいの服装でも、まったく問題はありません」と岸さんは語る。
②予算の目安はどれくらい?
「ある程度のお金は用意していかなければなりません。席料のテーブルチャージが500円〜1500円ほどです。カクテルやウイスキーは1杯が1000円〜ですから、3杯頼めば5000円ぐらいになります。時にはおつまみを頼むことや、限定品のウイスキーやフルーツカクテルなどを注文することもあるはずです。そうすると8000円以上かかってしまうこともあるでしょう。安心のためにも財布に2万円ほど入れておくことをお勧めします」
③大人数では入れない?
「テーブル席があるバーもあれば、カウンターのみの店もあります。席数によって受け入れられる人数の増減があり、上限は4~5人、基本的にはふたりまでが多いと思います。初めての方は、店を知っている人に連れてきてもらう場合が多いので、その時はふたりですがひとりでも問題ありません。正直困るのは大人数の場合です。バーが最も気を遣うのは声の大きさで、大人数ではついつい声が大きくなってしまいます。バーはあくまでもゆっくりとくつろぐ場であり、互いの気遣いが大切ですから、ふたりまでが良いでしょう」
④テーブルチャージの意味とは?
「テーブルチャージは席料のことです。流行っている店なら取らなくてもいいのかもしれませんが、これがないとバーが成り立たない部分も確かにあります。バーは料理やお酒をただ出して下げるだけではだめで、ひとりでの来店でも接客にあたる従業人が必要になるからです。テーブルチャージをいただけば、満足のゆく接客ができるのかといえば難しい問題ですが、現状はいただいている店が多いとご理解ください」
⑤お勧めの時間帯は何時頃?
「バーが混雑するのは22時〜24時くらいまでの間です。初めての方なら、その時間帯以外で、ある程度お客様がいる方が入りやすいかもしれません。ただ、バーテンダーに飲み方やマナーを質問したいのであれば、開店から1時間後の店が落ち着いた時間帯がいいと思います」
ゆっくり飲みたいなら週末ではなく平日の、開店してしばらくたった時間帯がベスト。バーテンダーも混雑して接客できないと、申し訳ない気持ちになっているもの。