ビッグモーターと損保ジャパンの関係

 そんなビッグモーターと損保ジャパンの関係は深い。損保会社にとって、自賠責保険の販売窓口となるディーラーは重要な存在であり、損保ジャパンもビッグモーターと保険代理店の契約を締結し、事故を起こした契約者に対してビッグモーターの修理工場を紹介していた。

「保険会社とのパワーバランスも影響していたのでしょう。これだけのスケールの専業店になると、任意保険の契約数もトップレベルでしょうし、指定工場を多数構えていることから、自賠責保険の販売面でも保険会社にとってはビッグクライアントになるでしょうから、不正行為に対して黙認していた部分もあるのかもしれません」(中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏/7月18日付け当サイト記事より)

 損保ジャパンが法的な罪に問われる可能性はあるのか。山岸純法律事務所の山岸純弁護士はいう。

「要するに、損保ジャパンから出向していた『損保ジャパンの社員』は、インチキ修理によって自分の勤務先(損保ジャパン)が不必要に保険金を支払うことに加担していたわけです。『損保ジャパン』という他人のために仕事をしている人が、『損保ジャパン』に『不必要な保険金を支払わせる』という『損害』を与えているわけですから、5年以下の懲役刑などを定める『背任罪(刑法第247条)』が成立する可能性があります。

 ところで、『ビッグモーターの社員』についてですが、インチキ修理によってお客さんから「不必要な修理費用」を徴求していたら、10年以下の懲役刑を定める「詐欺罪(刑法246条)」が考えられます。もっとも、面倒なのは、ほとんどのお客さんは『保険金』で修理費用を賄っているという点です。つまりお客さんは、『財物』を交付しているわけではないので詐欺罪にはならないのです。損保ジャパンから『不必要な保険金』を受け取ったという点についても、保険金を請求するのはお客さんですから、ビッグモーターには『損保ジャパンを騙す』という行為がないわけです。

 そこで、『間接正犯』という考え方がでてきます。これは、お客さんを道具のように利用して犯罪を成立させることを言うのですが、今回の場合、インチキ修理について何も知らないお客さんを利用(悪用)して損保ジャパンから『不必要な修理費用』を得ているので、詐欺罪の間接正犯として逮捕・起訴することもできるかもしれません」