24日付け読売新聞記事によれば、自動車保険の保険金水増し請求問題に揺れる中古車販売大手ビッグモーターに、大手損害保険会社・損害保険ジャパンが2011年から計37人の出向者を派遣していたという。損保ジャパンは不正の舞台となったビッグモーターの板金部門(自動車修理事業部門)に出向者を送り込んでいたことがすでにわかっているが、24日付け時事通信記事によれば、出向者のなかには板金部門の担当部長に就いていた人もいるという。不正発覚を受けて三井住友海上保険と東京海上日動火災保険がビッグモーターの修理工場への、自動車事故を起こした保険契約者の紹介を停止していたなか、損保ジャパンのみが再開し、それによってビッグモーターを窓口とする自社の自賠責保険の契約数を増やしていたことも明らかになっており(14日付「東洋経済オンライン」記事より)、損保ジャパンによる不正への関与の有無が焦点となりつつある。
「損保ジャパンの契約者のなかには、ビッグモーターによる破損度合いの水増しによって、自賠責保険の保険料が増額になった人もいるだろう。損保ジャパンがそれを認識しつつ自社の保険契約数を増やすためにビッグモーターの不正を黙認していたとすれば、自社の契約者に損害を与えていたことになる。板金部門の管理職ポストに出向者を送り込んでいた以上、自ずと同部門で起きたことへの責任が生じるので、不正を認識していなかったという主張は成立しない。ビッグモーターと共犯関係にあったといわれても仕方ない」(ディーラー関係者)
不正発覚後も積極的にCM放送や人材採用
昨年に不正が発覚した当初、ビッグモーターは組織的関与を否定していたが、顧客から修理を請け負った車両に故意にゴルフボールを入れた靴下を車体に打ちつけて傷を付けたり、ドライバーで車体に引っかき傷を付けたりして事故の度合いをかさ増しし、損保会社に自動車保険の保険金を水増し請求するという悪質な行為が次々と明るみに。批判の強まりを受けて今年1月に特別調査委員会を設置しお詫びコメントを発表したが、その後も積極的にCMを放送し、さらに本部は店舗や工場など現場に対して高いノルマを課し続けていた。
調査委員会は今月7日に報告書をまとめたが、損保会社各社には報告書の抜粋版のみを提出し、悪質な行為の内容や経緯を省略。ようやくメディア各社にCMの放送中止を通知したのは、今月20日になってのことだった。一方、現在もビッグモーターの公式サイトのトップページ上部には大きく「クルマを売るならビッグモーター」「6年連続買取台数日本一」「安心BIG車検は年間26万台の車検実績」などの宣伝文句が躍っており、さらに平均年収1109万円を提示するなどして新規の人材募集を行っており、反省の色は見えない。
新たな事実も次々と判明している。19日付「テレ朝news」記事によれば、車検を行う整備部門が保険会社に不正請求をするために、顧客から預かった自動車のタイヤにドライバーとネジで穴を空けて自然にパンクしたように見せかける方法を指南する動画を作成しているという。また、バッテリーを新品に交換するとして代金を受け取ったものの、実際には新品に交換していない事例もあるという。
背景には、本社から店舗や工場が課される高いノルマがある。調査委員会がまとめた報告書によれば、修理1台当たりの工賃と部品から得る粗利の合計金額が14万円になるようノルマが設定されているという。また、19日付朝日新聞記事によれば、店舗の営業担当者は買い取りと販売の月間台数5台ずつというノルマが設定されており、達成できないと上司から厳しく叱責されることもあるという。
高いノルマに加え、役員が月1回の頻度で店舗を回り掃除や整理整頓の状況をチェックする「環境整備」が行われ、不備が見つかると店長がその場で降格が命じられるため前日に深夜まで掃除をしたり、グループLINEで幹部が店長に罵詈雑言を浴びせたりすることが日常的に行われていたことも明らかになっている。