多岐に渡る修復と整備で
本来の性能を回復させる

 続いて感激させられたのは、中古車の品質を高める作業環境だ。レッドバロン各店が中古車を下取りした際に、独自に開発した『コンピュータ総合診断機ACIDM(アシダム)』で各種測定を行い、納車前に84項目の点検整備を行っていることはご存じの読者も多いだろうが、本社工場では一般的な整備を超えた本格的なレストア作業が行われていた。工場内にはエンジン/キャブレター/リヤショックのオーバーホール、ノーマル塗色を忠実に再現したリペイント、シートの張り替え・ウレタン加工ができる設備が整っているのだ。
 いずれにしても、同社のパーツのストックと点検・整備環境は、一般的な中古車販売店とは次元が異なっている。おそらく、中古車の性能回復と維持にここまで真摯に取り組んでいるのは、世界で唯一、レッドバロンだけだろう。
 もちろん、日本全国に展開する306の店舗でメンテナンスの情報を共有していることや、グループ全体の中古車在庫数が常時4万1000台前後で、どの店舗からでも『イントラネット検索システム』を用いて希望に沿った車両を探せること、購入後は全店で同様のサービスが受けられることなども、同社ならではの魅力だ。
 中古車はミズモノ。世間ではそうした話をよく聞くけれど、レッドバロンの中古車には当てはまらない。今回の取材を通して、その事実を改めて実感させられた。

独自に補修パーツを準備することで純正リヤショックの性能を回復

純正部品の設定がないため、世間で難しいと言われている純正リヤショックのオーバーホールも、レッドバロンではシール類を筆頭とする補修パーツを独自に準備することで、対応できる環境を完備している。減衰力の状況を測定してグラフ化するダンピングテスターは、同社のオリジナルだ。

劣化が進んだ負圧式キャブレターでも、再生は十分可能

同社が扱うキャブレターの主役は、’80年頃から本格的な普及が始まった負圧式。この写真はメインボアの流量の差異を測定しているところだ。

長年の使用で変形したバタフライバルブは、オリジナルの補修用に交換。サイズは多種多様に揃う。

キャブの補修例。フロートピンの支柱の破損は右から順に修復が進む流れを見せる。バイパスパイプやアタッチメントは独自に部品を製作。

新品のレザーを導入することでルックスと快適性が大幅に向上する

保管状況が悪かった中古車は、シートが劣化していることも少なくない。この問題を解消するべく、同社はレザーを独自に製作。なおレザーは高周波溶着機を用いた型押し、ウレタンに関しては補修・加工も行う。エアタッカーを用いた張り込みは、職人の技術を必要とする作業なのだ。

補修パーツが整然と並ぶ、車種専用の巨大な部品棚

ホーネット用の部品棚を眺める。目印として置かれた車両の左横には10機以上の同車用エンジンが並び、上部には電装系や排気系、足まわり関連など、多種多様なパーツが整然と収められている。本社工場にはさらに、エンジン、リアショック、メーター、オルタネーターなど、各部品を集めたストックヤードも別に存在するのだ

掲載誌:Heritage&Legends
Report:中村友彦 Photo:富樫秀明