壮大なボロブドゥール寺院

ジャワ島中部にあるボロブドゥール寺院は、総面積1.5万平米におよぶ仏教遺跡です。8世紀後半に建造された後に久しく忘れ去られていたものの、1814年にジャワ総督代理のイギリス人とオランダ人技師によって発見され、1850年代の調査を経て、1907年から1911年にかけて復元工事が行われました。
およそ200万もの岩石のブロックが積み上げられ、72基のストゥーパ(仏塔)が並ぶボロブドゥール寺院は、世界三大仏教遺跡にも数えられています。密林のなかに突如として現れた「巨大な曼荼羅」は、アムステルダム派の建築家たちにも衝撃を与えました。
ストゥーパのフォルムは建築物や調度品のデザインに取り入れられています(下写真)。

- クラマーが1921年に設計したブリッジハウス ©Gert-Jan Lobbes
- デスクライト
- デ・クレルクがデサインしたヘット・シップの窓
- スパールンダマープラントスーン広場北側の集合住宅のファサード
- 置時計

建築家たちの純粋な情熱

アムステルダム派の建築家たちは、遠い東インドの文物に憧れを抱き、そのモチーフや様式を模倣しました。西洋の芸術が異文化の要素を取り入れることに関しては、文化の盗用と問題視されたり、「原始的」あるいは「非西洋的」といった人種主義のステレオタイプを再生するものとして批判されたりすることもあります。
ただ、アムステルダム派の美学には、少なくとも私にとっては、植民地の東インドを「原始的」なものとして見るような、政治的意図は感じられませんでした。ヨーロッパでは想像もつかないような東インドの文物に驚き、憧れ、それらを自らの芸術に昇華させようとした彼らの作品には、純粋な興奮が刻まれています。
アムステルダム派と東インドのつながりは、実はオランダでもほとんど知られていません。私自身も、また一緒に展覧会に行ったオランダ人の友人たちも、東インドの伝統芸能や工芸品、ボロブドゥール寺院などが、いかに大きな役割を果たしていたのか、はじめて知って驚きました。
アムステルダムの街には、アムステルダム派による建築物が数多く遺されています。その幻想的なフォルムを眺めるのが、ますます楽しみになりました。
『インドネシアとアムステルダム派』展
- 会場:ヘット・シップ博物館
- 所在地:Oostzaanstraat 45, 1013 WG Amsterdam
- アクセス:アムステルダム中央駅よりバス22系統で6分Spaarndammerstraat下車徒歩4分
- 会期:2022年12月1日~2023年8月27日
- 開館時間:火-日 11:00-17:00, 月曜休
- 料金:15ユーロ
文・写真・Kayo Temel/提供元・たびこふれ
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