礼拝堂の外観
礼拝堂の長さは14m、入口前には、暴風雨から小さな礼拝堂を守っている木があります。田窪氏が礼拝堂再生に望んだ「過去から未来に存在する永続的なもの」の体現となる推定樹齢500年の大木です。
昔ながらの石造りの外壁に古い瓦。屋根がまばらに光っているのは、再活用できる瓦は残し、足りない部分には瓦と同型のガラス板が配置されているから。 このアイデアが、中に入った時に素晴らしい芸術的効果を生み出しているのです。
ガラス職人オリヴィエ・ジュトー氏に発注された7色のガラス瓦は、 5000枚用意され、昔と同じ方法で枠組みにはめ込まれました。
鐘楼塔の先端には鉄の雄鶏、側面の扉の屋根上には十字架。田窪氏が自ら制作されたという雄鶏(le coq)は、フランスのシンボルで、田園風景にもぴったりです。
礼拝堂再建には、たくさんの鉄鋼が使用されています。入口と側面の扉も鉛板。それぞれの扉には、この礼拝堂の再生に携わった職人や行政人、資金貢献した企業名や人名が刻まれています。ジャン=ピエールさんの親族の名もあれば、日本関連もたくさん。まさに、日仏友好の刻印ですね。
礼拝堂の内側
礼拝堂に足を踏み入れると、目に入るのがこちら。壁面は、たわわに実る林檎がいっぱいで秋の林檎林の中にいるようです。祭壇両側にあるマリア像と聖ヴィゴール像の下には、林檎模様の日本風長のれんが掛けられ、その先が資料展示所です。マリア像の傍の壁面には、ノルマンディーの春の風物詩である林檎の花の図。田窪氏は、季節ごとに移りゆく林檎の木のデッサンを重ね、壁に描きました。
円天井の形は16世紀のもので、1993年に修復されています。天井からは、色ガラスを通過した優しい採光がこぼれ落ちてきます。床は厚さ3cmの鋼板が敷かれ、湿気を防ぐため、壁もまず鉛板で覆われています。
その上に田窪氏は、異なった色の絵の具を何層にも塗り重ね、最後に白色を重ねて壁を作りあげました。そして四季の林檎の木を描きました。
壁画の林檎は、白壁を道具で削ってさまざまな色を浮かび上がらせ、描かれています。
田窪氏が使用された道具がこちらです。
景観を損なうことなく、新旧が美しく融合され、感銘を与えてくれる芸術作品で、心を癒してくれる礼拝堂。 歴史ある建築物再生の素晴らしい実例を、フランスで日本人が実現されていることが、嬉しくて誇らしかった。更には、日仏友好の絆についても考え、色んな感情を呼び起こしてくれた林檎の礼拝堂の訪問でした。