労働参加率は62.6%と前月(62.7%から下方修正)と変わらず、コロナ感染拡大直後の20年3月の水準に並んだ。なお、20年2月は63.4%。
就業率は前月に続き60.3%、2020年2月(61.1%)以来の高水準だった前月の60.4%以下を保った。就業者数が前月比27.3万人増だった。
「病気が理由で働けない」とする人々は今回、前月比0.7万人増(年初来で2回目の増加)の92.8万人だった。それでも、コロナ後の平均値だけでなく、2015‐19年の平均値も下回り、労働参加率の横ばいにつながった。
チャート:「病気が理由で働けない」とする人々、コロナ禍後の平均以下に
(作成:My Big Apple NY)
足元、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就労者数の数字を比較すると、今回はNFPが20.9万人増に対し、家計調査の就労者数は27.3万人増と、前月の30.6万人増と31.0万人減のような正反対の結果を回避した。
チャート:NFPと家計調査の就労者数の結果、今回は乖離せず
(作成:My Big Apple NY)
家計調査の就労者数を雇用形態別でみると、フルタイムが38.2万人増と年初来で5回目の増加を迎えた。パートタイムは26.2万人減と、5カ月連続で減少した。複数の職を持つ労働者は、16.2万人増と年初来で4回目の増加となった。
チャート:パートタイムと複数の職を持つ労働者が増加
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チャート:フルタイムの雇用は、雇用増トレンドに戻す
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チャート:複数の職を持つ者は、年初来で4回目の増加
(作成:My Big Apple NY)
ーー以前からお伝えしたように、これまで筆者は、複数の職を持つ者がNFPを押し上げた可能性を指摘しておりました。理由は、NFPの場合、賃金をベースにカウントするためで、家計調査と異なるためです(i.e. 副業を持つ就業者の場合、NFPなら2つの雇用増とされるが、家計調査は仕事が2つあっても、1人分として集計する)。最近では、NFPを算出する上での起業・廃業モデルに注目しておりました。すると、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙も、7月に同様の記事を配信し、起業・廃業モデルなどを理由に「NFPは労働市場を過大評価している可能性」を取り上げ、筆者以外に疑問視する声の存在を感じさせました。
今回はというと、前月と今月の結果を踏まえると起業の増加による雇用増もNFPの押し上げを担っていると考えられます、起業・閉鎖調整ベース(季節調整前)の雇用増加をみると前月比2.6万人増と過去2カ月間の2桁増に届かず。NFPも堅調なペースを維持しながら、今回は前月ほど伸びておらず、ある程度、起業・廃業モデルがNFPと相関があると言えるでしょう。
チャート:起業・閉鎖調整ベースの雇用増(季調前)は、4月に2022年10月以来の高水準
(出所:My Big Apple NY)
かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全就業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全雇用率 採点-× 経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全雇用率は6.9%と前月の6.7%を上回り10カ月ぶりの水準へ上昇した。なお、22年12月は1994年の統計開始以来で最低を更新し6.5%だった。同理由でパートタイムの不完全雇用者数は45.2万人増となり、サービス業を中心に需要低下を受け労働時間が短縮された労働者の増加を示唆する。
チャート::不完全雇用率、10カ月ぶりの水準へ上昇
(作成:My Big Apple NY)
2)労働参加率 採点-△ 労働参加率は62.6%と4ヵ月連続で横ばいで、20年3月の水準に並んだ推移を保った。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。
チャート:不完全就業率は過去最低水準から上昇、労働参加率と就業率は改善
(作成:My Big Apple NY)
3)長期失業者 採点-△ 失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は8.7週と前月の8.6週から延びた27週以上にわたる失業者の割合は18.5%と、4ヵ月ぶりの低水準だった。
チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、4ヵ月ぶりの低水準
(作成:My Big Apple NY)
4)賃金 採点-△(インフレ抑制の観点でも△) 今回は前月比0.4%上昇し、前月の0.4%(0.3%から上方修正)と変わらなかったものの、市場予想の0.3%を上回った。前年比は4.4%と上方修正された前月と一致しつつ、2021年7月以来の低い伸びだった。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.4%と前月通りの伸びに。ただし、前年比は4.7%と、前月の4.9%を下回り2021年6月以来の低い伸びだった。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年7月8日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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