子供の行方不明事件が先進国の中でも突出して多いといわれるアメリカでは、2022年に35万件以上の子供の行方不明事件が報告されたという。数時間以内に解決する事件もあるが、多くの子供たちがいまも行方をくらませている。そうした中、1983年に起こった少女の行方不明事件は神隠しとしかおもえない奇妙な状況での失踪、そして事件後に謎の男たちからの奇妙な告白があったことから、いまもたびたび犯罪ドキュメンタリーなどで取り上げられている。
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※ こちらの記事は2020年7月20日の記事を再掲しています。
まさに“神隠し”としか言い表せない失踪事件がある。キャンプ地で“蒸発”した4歳の女の子、ナイリーン・マーシャルもその1人だ。
4歳の女の子が忽然と姿を消す
さっきまで一緒に遊んでいた子どもがちょっと目を離した隙に忽然と姿を消してしまった――。現場に居合わせた誰もが悲観し、途方に暮れているのが「ナイリーン・マーシャル失踪事件」である。
1983年6月25日、米・モンタナ州ヘレナ近郊のヘレナ国有林にあるキャンプ地では、多くの家族が参加するハム無線同好会の集まりが催されていた。天気の良いキャンプ日和の1日で、各所で笑い声が絶えず、子どもたちは自然の中で嬉々としてはしゃいでいた。
この集まりに参加していた家族の1組がマーシャル一家だった。日も傾いてきた午後4時、マーシャル家の4歳の娘ナイリーン・ケイ・マーシャルは、ほかの子どもたちと遊んでいるうちに、まるで神隠しにでもあったかのようにいなくなってしまったのである。

その時、ナイリーンは子どもたちと一緒にキャンプ地から少し離れた木立の中で遊んでいたという。あたりにはビーバーダム(ビーバーが作ったダム)などの水辺もあり、最年長の少年が先頭を歩いて木立の中を進んでいたというが、振り返ってみるとナイリーンがいないことに気づいたのだ。ナイリーンの“蒸発”はほんのわずかの間の出来事であったという。
子どもたちは最初、ナイリーンが隠れんぼをしているのかもしれないと考えた。しかし名前を呼びながらあたりを探しても一向にナイリーンが姿を現す気配はなく、仕方なく子どもたちは90メートルも離れていないキャンプ地に戻って大人たちにナイリーンがいなくなったことを報告した。
警察や森林管理当局にもすぐに知らされ、レスキューチームも加わった大規模な捜索が開始されたのだが、ナイリーンの行方はわからずじまいだ。捜索隊の中には実績豊富で優秀な警察犬がいたのだが、ナイリーンの匂いはいなくなった水辺の地点で消えていたようで、この犬も途方に暮れていたという。
ナイリーンと一緒にいた子どもたちのうち2人の少年が、木立の中でジョギングウェアを着た成人男性がいたことを証言した。
恐ろしい形相をしていたというその男は、ナイリーンに話しかけたとも見られ、「影を追え(follow the shadow)」という発言もあったという。ナイリーンはこの男に誘拐されたのだろうか。
捜索のために多くの人員が木立に立ち入ったため、ジョギングをしていたその男の痕跡を今から特定するのはほぼ不可能であった。男の容貌について少年たちの記憶もやや曖昧で、似顔絵が公表されたもののこの男についての情報は一切得られることはなかった。
10日間に及ぶ徹底的な捜索に続き、ナイリーンの写真は、全国の新聞、テレビ、チラシ、牛乳パックにまで掲載されて情報提供が求められたが、有力な情報はまったくなく、警察は“誘拐説”からは離れはじめ、ナイリーンは本当に迷子になってどこかで行き倒れになったのだという見解を色濃くしていった。