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無限の可能性を秘め、未だ「底なし」の名機L型
市販車用エンジンとしては「偉大なる平凡」
無限の可能性を秘め、未だ「底なし」の名機L型

2035年までに急いでBEVやHVの新車を揃え、純エンジン車はなくなる世の中になると思いきや、事実上の言い出しっぺであるEUが自動車大国・ドイツからの要請を受け、「合成燃料を使う」という条件つきながら、一転して「エンジンもOK!」になったこの頃。
ついこの間までの「消えゆく純エンジン車へ今のうちに乗って別れを告げよう!」的な雰囲気から急には世の中も変われず、戸惑いが広がっているものの、まだまだ内燃機関には可能性が残されているのも確かです。
今回は古の「無限の可能性を秘めたエンジン」でありながら、未だに最新チューン技術が開発されている名機、「日産L型」についての話をしましょう。
市販車用エンジンとしては「偉大なる平凡」

日産L型とはどんなエンジンだったのか?
まずはザックリと概要ですが、1960年代半ばに登場した日産L型とは、直6(直列6気筒)および直4(直列4気筒)が存在し、いずれも終始一貫して吸気と排気が同じ方向から出入りする「ターンフロー」形式だったSOHC2バルブエンジン。
直4は1970年代に排ガス規制対策を施し、クロスフロー(吸気と排気が別方向から出入りする)・ツインプラグ急速燃焼特徴とする派生エンジンZ型を後継にして消えたものの、直6は電子制御インジェクション化やターボ化など発展を経て1980年代まで使われました。
直6は1965年10月にモデルチェンジした2代目セドリック(130系)の最上級グレード「セドリックスペシャル6」で2リッターL20、直4は1967年8月にはモデルチェンジした3代目ブルーバード(510系)で1.3リッターL13、1.6リッターL16がデビューしています。
小排気量から大排気量、ディーゼルまでバリエーション豊富!
直4と直6はごく初期と末期を除けば気筒数や排気量、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンと違っても基本は全て共通で、部品の使い回しもきいたので生産や整備には非常に都合がよく、余裕があって頑丈な設計により、排気量拡大や出力向上にもよく耐えました。
そのため直4は1.3/1.4/1.6/1.8/2.0リッターガソリン/2.0リッターディーゼル、直6は2.0/2.4/2.6/2.8リッターガソリン/2.8リッターディーゼル版が作られ、ミドルクラスセダンから大型セダンやスポーツカーまで、1970年代まで多くの日産製乗用車がL型を積んでいます。
この優れた拡張性が後年までL型に「名機」の称号を与えた由来なのですが、実際に称えられるのは後述するチューニングエンジンやレーシングエンジンでの話。
どノーマルでは良く言えば平凡、率直に言えば鈍くさい類
どノーマルの市販車用エンジンとしては、一部のSUツインキャブ搭載車などスポーツグレード用を除き、むしろ「確かに頑丈だけど、鈍くさくてトラックみたいなエンジン」という評価が大半です。
末期に大幅な改良を受けたR30スカイライン用のL20E/L20ETに限れば、「軽やかに吹け上がる直6エンジンらしい名機」と呼ばれるくらい成長したものの、それを最後に直6ディーゼルのLD28を除き、直6のRB、V6のVGといった新型エンジンへ更新されてしまいます。
つまり市販車用エンジンとしてのL型とは、ほとんどの期間にわたって名機どころか、日産にとって生産や整備で非常に都合がよく頑丈なだけのエンジン、よく言えば「偉大なる平凡」であり、名機と呼ばれるようなエンジンとは対極の存在でした。