この関係を考えるのに参考となる症例を紹介する。パーキンソンの病歴がある76歳の男性であるが、コロナワクチンの接種後にパーキンソンの症状が悪化して運動障害もみられるようになった。3回目のワクチンを接種した3週間後に、突然、倒れて入院、集中的治療が行われたが間もなく死亡した。

剖検が行われ、直接の死因として、誤嚥性肺炎が考えられたが、脳には多発性壊死性脳炎、心臓には軽度の心筋炎の所見が見られた。得られた組織について、抗スパイク蛋白と抗ヌクレオカプシド抗体を用いた免疫染色を行ったところ、脳の血管内皮細胞とグリア細胞、心臓の血管内皮細胞にスパイクタンパクの発現が見られた(図7)。ヌクレオカプシドの発現は見られなかった。

コロナ感染による場合は、スパイクタンパク抗体に加えてヌクレオカプシド抗体にも染色されるが、この症例では、スパイクタンパクにのみ染色されたので、ワクチン由来の遺伝情報によって産生されたスパイクタンパクと考えられた。ワクチン接種後にみられる心筋炎はスパイクタンパクによる心筋傷害と考えられているが。壊死性脳炎の原因も同様にスパイクタンパクによる傷害と考えられる。

担当医は、パーキンソンの悪化がもとにあり、直接の死因は誤嚥性肺炎と診断したが、家族が病理解剖を希望したことによってワクチンの関与が明らかになった症例である。

図7 脳、心臓の血管内皮細胞とグリア細胞におけるスパイクタンパクの発現

高齢者が死亡しても、病理解剖されることは稀であり、たとえ病理解剖を行っても抗スパイクタンパクを用いた免疫染色による検討はほとんど行われていない。高齢の死亡例に対しても、免疫染色を含めた病理解剖を行うことで、ワクチン接種との因果関係が明らかになると思われる。