1. 金融機関の金融取引: カナダ、イタリア

    続いて、カナダとイタリアのデータです。

    図6 カナダ 金融機関 金融勘定 対GDP比OECD統計データ より

    図6がカナダの金融機関の金融勘定 対GDP比です。

    他の主要先進国と異なり、安定している印象です。

    確かにリーマンショックによる収縮も見られますが、他の主要国ほど急な変化ではありませんね。

    アメリカほどではありませんが、負債側の現金・預金が少ないのが特徴的です。その代わり、債務証券、借入、株式、年金・保険がバランスよく含まれている印象ですね。

    資産側も貸し出しをベースに、債務証券、株式などのバランスが取れている印象です。

    金融取引の規模は対GDP比で15~40%程度ですね。

    図7 イタリア 金融機関 金融勘定 対GDP比OECD統計データ より

    図7がイタリアの金融機関の金融勘定 対GDP比です。

    特徴としては、リーマンショックによる収縮が少ない事(その前に既に収縮している)と、資金過不足がやや大きめのプラス側で推移していることですね。

    リーマンショック後の貸出がほとんど増えておらず、その代わり債務証券の増え方が大きいのも特徴的です。

  2. 金融機関の金融勘定の特徴

    今回は主要先進国の金融機関の金融勘定について対GDP比の比較をしてみました。

    リーマンショックを機に金融取引が急激に収縮したアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと、あまり影響しなかった日本、カナダ、イタリアで分かれているのは興味深いですね。

    日本やイタリアはその頃すでに、金融取引が収縮していたことが大きいように見受けられます。

    比較的家計が現金・預金を持たず、企業の負債のうち借入が少ないアメリカやカナダの特徴も良く表れていますね。

    フランスやイギリスの金融取引が、リーマンショック前には対GDP比で100%を超えていたことも驚きでした。

    金融機関の金融勘定では、このように他の主体の金融取引が反映されるという特徴があるようです。

    各国の金融取引が活発だった時期や、急激に収縮した時期、金融取引の内訳なども読み取れますね。

    2020年、2021年はコロナ禍の影響とみられる急拡大が見られますが、2022年にはある程度落ち着いているようです。

    この後どのように経済活動が推移していくのか、金融機関の金融勘定にも注目していければと思います。

    皆さんはどのように考えますか?

編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2023年6月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。