外交には相手国がある。

従ってその交渉内容を全て国民に開示することはできない。それは現在進行中の日米同盟の深化作業についても同様である。政府および与党が、今なぜLGBT理解増進法の制定を急ぐのか、その本当の意図は政権外部の人間が知る由もない。当然、本稿で展開した背景仮説も推測に過ぎない。

しかし「日本の法体系も欧米社会のそれと同等に人権を重視している」と主張し理解を得るための外形的な根拠の一つとして、(成立した場合の)「LGBT理解増進法」が大いに役立つことは間違いない。何らかの密約をしていた場合には尚更である。

そのことは結果として、日米同盟の深化に貢献し、台湾有事に対する抑止力を高め、あるいは有事における連携強化をもたらす。これは国家安全保障戦略遂行の一環であり、武力ではない外交による平和維持のための努力である。

岸田政権の高度な政治判断の一つとして評価する。