日本は欧米社会からどう見られているか

対等になれない背景に、まずは「敗戦国と戦勝国」の厳然たる関係性がある。

さらに深層には、日米間の言語や思考方法の差異(思考のギャップ)が横たわり、相互理解が深まっていない問題も存在する。

具体例を挙げると「日米開戦に至る日本の意思決定」について、その曖昧さと複雑さのために、米国人はおろか(一部の賢人を除く)日本人でさえ深くは理解できない。米国から見れば「チェックメイト」になるはずの「石油全面禁輸」が、「開戦の決断」という真逆の意思決定を引き出したのは誤算であっただろう(蔣介石やチャーチルは祖国勝利の予感で喜んでいたようではあるが)。

また、日米戦争末期の組織的な自己犠牲攻撃である「神風特別攻撃」や「戦車への自爆攻撃」は、前線の米軍人に強烈な印象(恐怖)を与えた。そのため終戦から半世紀以上経過しても、例えば「9.11」同時多発テロ事件時でも「カミカゼ」が連想されていたりする。英語の辞典にも“kamikaze (attack)”という単語が収録されているのは、その文化的衝撃の名残だろう。

チャーチルではないが「日本語は論理的ではなく、その思考回路は理解しにくく、何をしでかすのか予想しにくい」という疑念は、今も拭えていない可能性が高いと推測している。

更に遡るならば、ビゴーがフランス人租界に向けて、彼らから見た“日本人の奇妙な姿” を風刺した多くの絵画は「彼らの視座」に関する貴重な物的証拠である。欧米社会では、今も「“従軍”慰安婦報道(NYT)」や「ジャニーズ事務所の性犯罪報道(BBC)」に姿を変えて虚実綯い交ぜに報じて日本の奇妙さを喜んでいる。

また近時の例を挙げるなら、ラーム・エマニュエル駐日米国大使の「日本は進化の過程にある」発言などがある。これなどは、米国支配層の率直な「対日観」が漏れたものと考える。

国会で近く成立する見通しとなっている性的少数者の理解増進法案に関し「政治は社会を反映し、政治が法を新しくしていく。日本は進化の過程にある」と話した。(共同通信6月9日)

要するにこれらは、欧米社会が日本を「文化的な後進国」と看做す視点が昔から存在し、現在に至っても変わらないことを表しているのである。

これらが示す通り、欧米の価値観から見ると日本人の思考は異質なものであり、我々の自己認識はどうあれ、彼らからはいまだに「発展途上の文化・民族」と見られているのも現実である。

目次
国家安全保障戦略上に明示された国益日本は欧米社会からどう見られているかファイブアイズに入れない日本日米地位協定の存在むすび

ファイブアイズに入れない日本

日本における機密情報管理に関し、セキュリティー・クリアランスに対する整備は急速に整備されている。しかしそれは台湾有事への備えとして、基礎要件の一つに過ぎない。必要な情報戦能力を整えるためには、日米連携・日米韓連携に加え、ファイブアイズ(米・英・豪・加・ニュージーランド五か国による諜報協定)とも連携することが極めて重要である。

しかしこれまで日本は加入できなかった。簡単に言うとスパイ防止法や諜報機関の欠如が足かせとなってきたからである。

首相もかつて自民党総裁選で示した政権構想で「日米同盟を基軸に、先進7カ国(G7)やファイブアイズなどと連携」する方針を掲げていた。ただ、日本が参加を検討する場合、情報収集・分析機能の強化や、スパイ行為を取り締まるスパイ防止法などの法整備が求められる。(産経ニュース)

台湾有事への懸念は日を追うごとに増しており、今やその抑止と防衛準備に全力を尽くすべき段階である。その環境において、日本は「法の支配」など共通の価値観を持つが、現実の法体系では「スパイ防止法」の有無などいくつもの大きな差異が欧米諸国との間には存在する。

(日本人としては納得しがたいが)「LGBT法案」もその一つであり、人権の尊重などの直接的な観点以上に、外交と国防の基軸である「日米同盟」の深化に対する効果の方が大きいだろう。

日米地位協定の存在

「国内法であるLBGT法案」と「外交や防衛」のつながりが今一つ腑に落ちないかもしれないが、その場合は、日米同盟の具体的な姿である「日米地位協定」を想起して頂きたい。

平時においても、例えば墜落事故が起きれば米軍の強い権限は発揮されるし、有事になれば日本全土が策源地として有効利用されるだろう。かつて説明されていた「楯と矛」の役割分担でも、敵の激烈な武力を受ける役目は、まずは自衛隊である。現実の関係性は“対等”とは程遠い。

幕末に結んだ不平等条約を改正するのに何十年もかかったように、この日米地位協定に象徴される関係性を、より対等に近づける実際の作業には大変な苦労があるだろう。しかし日米同盟を深化させる上で、避けて通ることはできない。

むすび