中長期の成長に必要な研究開発費の増加
今後、レーザーテックに期待される取り組みの一つは、研究開発費の増加だ。昨年11月にチャットGPTが公表されて以降、加速度的に生成型AIの利用は増えている。米国では、マイクロソフトに続き、メタ(旧フェイスブック)、グーグル、アマゾンなどが生成型AIを用いて収益分野を拡大しようとしている。
日本でも生成型AI分野で収益獲得を狙う企業が出始めた。6月9日、2023年度中にNTTが独自に開発したAIを企業向けサービスに導入すると報じられた。近年、NTTはNECや富士通との連携を強化した。かつて、電電ファミリーと呼ばれた企業の連携体制が復活しつつある。NTTは、次世代通信として注目を集める光通信(IOWN(アイオン)プロジェクト)、量子コンピューティング関連技術の開発にも取り組んでいる。いずれも、より高性能な半導体の検査、製造装置を必要とするだろう。それもレーザーテックの成長期待を高める要素だ。
一方、今後、世界経済の先行き不透明感は高まる可能性が高い。米国では、徐々に労働市場の改善ペースが鈍化している。中国では、若年層の失業率が上昇した。個人消費も低調だ。要因として、ゼロコロナ政策の負の影響、不動産市況の持ち直しペースの緩慢さなどは大きい。世界的に物価も高い。米国やユーロ圏の金融引き締めは長引くだろう。企業や家計の利払い負担は増加し、設備投資と消費の減少が懸念される。世界的な景気の後退懸念は高まり、半導体需要が追加的に減少する展開は排除できない。
全体として弱い動きが増えやすい事業環境下、レーザーテックは自己資金と、緩和的な国内の金融環境を活用し、最先端の検査技術の研究、開発体制を強化すべきだ。それは、同社の中長期的な成長期待に大きく影響するだろう。レーザーテックの成長志向が高まれば、半導体製造装置、関連部材などで世界的な競争力を発揮しているわが国の企業にも、大きな刺激になるだろう。そうした観点から、今後、レーザーテックが研究開発費の積み増しを中心にどのような成長戦略を立案、実行するか、目が離せない。
(文=真壁昭夫/多摩大学特別招聘教授)
提供元・Business Journal
【関連記事】
・初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
・地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
・有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
・現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
・積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?