AI対応チップ需要など成長期待の高まり

 そのなか、レーザーテックの成長期待を支える変化が起き始めた。その一つは、米半導体企業であるエヌビディアの成長期待が急速に高まり始めたことだ。5月24日、エヌビディアの2~4月期決算では、最終利益が市場予想を上回った。背景の一つとして、マイクロソフトがチャットGPTを用いた検索ビジネスなどを強化したことは大きかった。AI利用は急増している。エヌビディアが開発した最新チップ、H100の需要は一気に押し上げられ始めた。

 エヌビディアは、主にチップの設計、開発を行うファブレス企業だ。TSMCが最先端の製造ラインでH100の生産を受託している。TSMCが良品率の向上を実現するために、レーザーテックの最新検査技術への需要は高まる。そうした見方から、エヌビディアの決算後、レーザーテックの業績期待は高まり、株価上昇は勢いづいた。

 また、レーザーテックをはじめ、日本企業に対する海外投資家の見方も徐々に変化し始めた。背景にはいくつかの要因がある。4月、割安さなどに着目し、「オマハの賢人」と呼ばれ、バークシャー・ハサウェイを率いるウォーレン・バフェット氏は日本株投資に前向きな考えを示した。円安の影響もあり、海外投資家にとって日本株の割安感は強かった。

 国内では、東京証券取引所が上場企業に、成長を強く意識した経営を行うよう求め始めた。この点に関して、レーザーテックは先駆的な存在だ。同社は、早くからファブライト経営を実践した。事業運営の効率性は向上し、競争優位性(コア・コンピタンス)である最先端の光技術を用いた検査技術にも磨きがかかった。レーザーテックは、新しい検査装置を投入して収益力を高めた。より多くの資金や人材が研究開発に投入され、成長は加速した。同社は東証が求める経営のモデルに位置づけることができる。

 日本企業を取り巻く事業環境も、変化し始めた。熊本県にてTSMCは第2工場の建設を目指す。また、北海道ではラピダスが新しいロジック半導体の工場を建設する。中期的な目線で考えると、先端分野でレーザーテックの検査技術への需要は増加するだろう。