人食いクロバエ

本当に怖いのは東アフリカから中央アフリカに生息する「コルディロビア・アンフォトファガ」「コルディロビア・ロッドハイニ」と呼ばれるクロバエの一種です。

「コルディロビア」はクロバエ科を意味する学名で「アントロポファガ」はギリシャ語の人間を食べるに由来して、学名をそのまま訳せば「人食いクロバエ」になる怖い蝿です。

「コルディロビア・ロッドハイニ」は最初に発見された患者に由来して「ルンド蝿」という通称が付けられています。

人食い蝿は濡れた砂地に約300個の卵を産み付け1~3日で孵化して、幼虫は9~15日間は地面で生きています。

ここに動物が入ると皮膚を食い破って体内に侵入して動物の体を食べて8~12日かけて3回の脱皮を終えると動物の体から離れて地面に落下してサナギになります。

サナギから蝿になれば最初に戻って増え続けます。

人食い蝿から見ると人間が干している洗濯物が卵を産み付けるのに適した湿った砂地と同じ物に見えるらしく、

干した洗濯物には人食い蝿の卵がついていることがよくあり、着ている時に卵が孵化すると幼虫はそのまま人間の皮膚にもぐり込んで成長を続けます。

この仕組みを知らない旅行者が人食い蝿が皮膚に寄生したまま帰ってきてから皮膚病だと思って病院に来ても普通の皮膚病と区別がつきにくいことから、サナギになるまで成長したウジ虫が皮膚からポロッと出てきて初めて気付いたりします。

人食い蝿に寄生された人間は最初は皮膚におできのような物が出来て痒くなります。しばらくしてウジ虫が成長するとおできからウジ虫の排泄物が出てきて汚くなり、成長に伴い痛くなってきます。

そのまま二週間ぐらい我慢していると自然にウジ虫が出て行くのですが、その間はかなり苦痛で気持ち悪いことになるけど、体からウジ虫が出てくる見た目の怖さの割に意外と無害です。

ウジ虫は体の表面から抗菌物質を分泌しているので傷口が清潔で感染症にならず、ウジ虫は呼吸のために尻尾を皮膚表面に出さなければならないため皮膚表面にしか寄生できません。

また、寄生した場所から移動することもないので、皮膚の下を這いずり回ったりもしません。

生きた人間にウジ虫が湧きゾンビ化… 奇病「ミアシス」の恐怖を亜留間次郎が解説
(画像=蝿蛆症(画像は「British Journal of Dermatology126-4-418」より)、『TOCANA』より引用)

治療と予防

治療法はウジ虫が呼吸しているのを利用してワセリンなどの空気を通さない油を皮膚に厚く塗って窒息しそうになったウジ虫が体内から出てきた所をピンセットでつまんで取り除く地道な作業で治療します。

体内でウジ虫が潰れてしまうと炎症を起こしたり皮膚に肉芽腫が出来たりして大変な事になるのでウジ虫を潰さないように取り除く必要があります。

出てこない時は一カ所ずつ皮膚切開して取り除く大変な作業になります。

人食いウジ虫には寄生虫駆除薬であるイベルメクチンも効きます、アンチワクチン界隈で謎の万能霊薬になっていますが、蝿蛆症はイベルメクチンの正しい使い方です。

人食いクロバエは干しておいた洗濯物に産み付けられた卵から人間の体に移動するため、アフリカでは人食い蝿に食われないための予防として服に徹底的にアイロンをかける習慣があります。

これは、干しておいた洗濯物に人食い蝿が卵を産んでもアイロンで殺してしまえば平気だからです。

人食い蝿が出る地域のホテルに洗濯を頼むと異常なまでに強くアイロンをかけられて帰ってくるのはお客様が人食い蝿に食われないための親切です。

ここで、意外に見落とされるのが下着類です。

徹底したアイロンがけが人食い蝿の予防だと知らない人は下着にまでアイロンをかけません。

その結果、アフリカから帰ってきた欧米人が人食い蝿に食われる場所は股間が多くなる珍騒動が起きています。

1992年の症例ではパンツとシャツに人食い蝿の卵が産み付けられていたせいで体に70匹ものウジ虫が寄生していた患者が発見されました。

2020年にはアメリカでエチオピアから帰国した人がパンツに産み付けられた卵が原因でパンツの場所だけウジ虫が皮膚にいた症例報告があります。

2016年にはガーナに旅行した17歳の女性のオッパイにウジ虫が侵入していた症例が報告されています。

別の症例報告では医師が患者の同意を得たうえでオッパイから飛び出しているウジ虫の写真を掲載しています。

こうした病気は見た目の気持ち悪さの割に害が低く治療法もウジ虫を取り除いて消毒洗浄するだけです。

ウジ虫は蝿にならないと卵を産めないので体内で増えることはありません。

ウジ虫が出す抗菌物質のおかげで傷口が常に清潔なので感染症にもなりません。

サナギになる直前まで大きくなれば自分から出て行ってくれます。

むしろ、素人がニキビみたいに自分で潰してしまうとウジ虫の破片が体内に残って肉芽腫になってしまいニキビの跡が汚くなったみたいなことになります。

多くの症例は育ったウジ虫が自分から出ていく段階になって出てきたウジ虫を見て初めて病院に駆け込むか、医師が皮膚病じゃ無かったと気付いています。

人食い蝿の症例報告は衛生状態の良い先進国ではアフリカや南米などからの帰国者にしかいません。

医者が診てもウジ虫が出てくるところを発見しないと普通の皮膚病と区別がつかないこともあって診断が遅れやすい病気ですが、めったに死なず重大な後遺症も無いことから手遅れにならないのが救いです。

ただ、自分の体からウジ虫が出てくるのを見たら致命傷を食らうのは肉体よりも精神かもしれません。

アフリカや南米に行く人は注意しましょう。

文=亜留間次郎

提供元・TOCANA

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