行政の「緩すぎる」対応、ハンター銃所持取消事件が関係か

 また一部では、ヒグマに対する行政側の対応が「緩すぎる」という批判がある。実際、今回相次いでいるヒグマの情報に際しては、関係者が「自ら考えて身を守って」などとコメントを残した。しかし、ヒグマは人を恐れることなく行動する傾向が増えてきている。ヒグマと人の距離はどんどん近づいているのだ。そのため、さすがに私たちが自ら考えていてもヒグマはそんなことお構いなしである。人を襲う可能性も否定できず、「自ら考える」という次元ではないと指摘しておきたい。

 さらにヒグマと行政をめぐっては、とある事件があり訴訟沙汰になっている。事情を知る地元紙記者は話す。

「ヒグマと行政をめぐっては18年、北海道砂川(すながわ)市のハンターが市側から要請されてクマを駆除した。それにもかかわらず、北海道警察砂川(現・滝川)警察署はハンターのライフル銃等を押収し、北海道公安委員会は当該ハンターの銃所持許可を取り消す事件があり問題化した」

 取り消し処分の後、当該ハンターは処分を不服として提訴。21年の第1審(札幌地裁)では取り消し処分について「著しく妥当性を欠く」等として公安委員会の処分を取り消したが、被告の道側はそれを不服として控訴している。前出の記者は続ける。

「この事件を受けて、ハンターたちは『なかなかクマを駆除できない』と苦しんでいる様子だった。数年前には札幌市東区の市街地にクマが現れ、人を襲撃。当時の札幌のテレビではほとんどがヒグマ情報を流していたほどだ。タラレバかもしれないが、砂川市のような事例がなければ本来はもっと早くヒグマを駆除でき、人的被害を減らすことができた可能性はある」(同)