保護責任者遺棄致死罪の可能性か

 猿之助は警察の事情聴取で「死んで生まれ変わろうと家族で話し合い、両親が睡眠薬を飲んだ」という趣旨の話をしており、猿之助の両親は司法解剖の結果、向精神薬中毒で死亡した疑いがあると発表されている。そして両親は自宅2階リビングで布団をかけられ仰向けの状態であった一方、猿之助は意識がもうろうとした状態でクローゼットの中にいるところを発見されたと伝えられており、両親の死亡に猿之助がどのように関わっていたのか、もしくは関わっていなかったのかは不明だ。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「マスコミ等において、『自殺教唆』や『自殺ほう助』といった罪の成立が騒がれています。確かに、何らかの理由で猿之助さんが、それまで自殺願望のなかった父親、母親に自殺や心中を勧め、自殺させるに至ったのであれば『自殺教唆』となりますし、その際、向精神薬を用意したり、飲ませたりすれば『自殺ほう助』が成立する場合があります。

 もっとも、今後、猿之助さんが(おそらく弁護士に相談するなどして)『父親(または母親)が自殺や心中を提案し、私も納得して自殺しようとしました』と供述した場合、『猿之助さんが父親、母親に対し自殺を勧めた』という図式にはならないので『自殺教唆』は成立しにくくなります。向精神薬も父親または母親が用意していたのであれば『自殺ほう助』も成立しにくくなります。この点は、猿之助さん自身に自殺の動機があり、父親、母親に自殺を勧めたのかどうかという点から解明されるでしょう。

 現在、猿之助さんしか生き残っていないので、当人がどのような供述をするか、それなりの量の向精神薬を誰が用意したのか、が今後の捜査のポイントとなると思います。向精神薬は、そんな簡単に手に入るものではないので、早晩、入手経路は判明することでしょう。

 ところで、母親については、先に亡くなっていたという客観的事実があります。母親が向精神薬を飲んで死に至る中、父親は老齢で『助けることができる立場』にない。このような状況に居合わせている猿之助さんは、通常、どのような行動をとるでしょうか? 通常は119に通報するなどして医療を受けられるようにしたり、介抱したりします(自分も自殺するつもりだったからこれらをしなかった、というわけにはいきません)。

 このように、生命や身体が緊急状態にある人がいて、この人を助けなければならない立場にある人が『何もしない』場合、『保護責任者遺棄致死罪』という罪が成立する可能性があります(3年以上20年以下の懲役)。正直なところ、捜査機関や検察も『生き残りの猿之助さんの心の中』を捜査していくことは困難です。

 とすれば、捜査機関や検察としては『助けを必要とする母親』がいて、『助けなければならない立場』に『猿之助さん』がいた、しかし『助けることなく、死という結果を招いた』という事実で立証することができる保護責任者遺棄致死罪を考えるでしょう。

 自殺を試みている方が『助けを必要としている』のかどうかという疑問は残りますが、もし、捜査機関や検察が刑事事件として立件し、有罪を求めるのであれば、現時点で判明している情報で考えるならば、保護責任者遺棄致死罪を適用する可能性が高いと思います」

 真相解明までは、まだ時間がかかりそうだ。

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

提供元・Business Journal

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