フィットでは代わりにならなかった、「俺たちのシビック」

「200万円以下で買えたタイプR」ストリートスポーツから街乗りまで全部シビックEK9【推し車】
(画像=スーパー耐久などレースにも出るのだからフィットタイプRを出しても良かった気もするが、ホンダにその気はなく、だからこそEK9は伝説的な名車となった、『MOBY』より 引用)

ドイツのニュルブルクリンクサーキット北コースで、未だに海外のライバルと「FF市販車世界最速」を争っているホンダのシビックタイプRですが、現行モデルでも約500万円とすっかり「高いんだから速くて当たり前なスポーツカー」の仲間入り。

しかし本来のシビックは「若いクルマ好きでも頑張れば買えて、夜な夜な峠に繰り出したり、ジムカーナや走行会で金をかけずとも楽しめる手頃なホットハッチ」だったはずです。

そのポジションをフィットに譲ってからは、どちらかといえば海外向けの大型高性能路線を歩んだものの、ならばフィットがシビックの代わりになったかといえば、ちょっと役不足。

だから今でも中古車で価値が落ちないどころか、程度良好なら高額取引も当たり前になっているのが、初代EK9シビックタイプR。

「俺たちのシビック」、「世界最速より町内最速」を誇った最後のシビックタイプRは、発売当時どのようなクルマだったかをご紹介します。

あのタイプRが、200万円以下で買えるって?!

「200万円以下で買えたタイプR」ストリートスポーツから街乗りまで全部シビックEK9【推し車】
(画像=EK9シビックタイプRの1.6リッターDOHC VTECエンジン、B18B、『MOBY』より 引用)

1995年10月、ホンダの「タイプR」第2弾としてDC2(3ドア) / DB8(4ドア)インテグラタイプRが発売された事により、高額で非現実的なスーパーカー、NSXだけのものだったメーカーチューンドが、一気に「現実的に買えるクルマ」となりました。

ただ、220万円台の価格は今の視点から見ればバーゲンプライスとはいえ、当時の所得や物価からは格安と言いにくく、実質2リッター級の新型スポーツモデルを所有できる環境を持つユーザー層は限られています。

つまり、学生や20代前半までの若者にとってのホンダスポーツとは相変わらずシビックの3ドアハッチバック車であり、同年9月に発売されたEK4シビックSiRが約150万で買えるのとは、大きな開きがあったのです。

だからこそ、1997年8月にEK9、初代「シビックタイプR」が発売され、レースや競技用のベース車なら約170万円、ある程度の実用性を持たせた標準モデルでもギリギリ200万円以下の199万8,000円で買えた事は、本当に驚きでした。

当時、三菱のテンロク級競技ベースモデル、ミラージュRSなら138万円で買えたものの、ミラージュの4G92を上回る185馬力、既にインテRで定評を得ていたタイプRスペックのエンジンB16Bを積むEK9は、若者を熱狂させたのです。