5月27日は「ドラゴンクエストの日」。1986年にシリーズの一作目となる「ドラゴンクエスト」が発売された日にちなんで、発売元である「スクウェア・エニックス」が制定しました。
勇者が姫を救い、世界を我が物にせんとする悪に立ち向かうというわかりやすいストーリーに皆が夢中になり、瞬く間に大ヒットとなった同シリーズですが、あれから37年。ナンバリングタイトルは11作目までが発売され、その間にシリーズを象徴する「勇者」の定義も、時代と共に随分変わったと感じます。
■ ドラクエ1から4における勇者はまさに王道
ドラゴンクエスト1から4における勇者は、イコール主人公そのもの。冒険の目的も、基本的には世界を支配しようとする巨悪に立ち向かうという、単純明快なストーリーが展開します。
1~3の主人公は伝説の勇者「ロト」の血統者、4では天空人の血を引く特別な存在として描かれ、能力も2の主人公を除き、非常にバランスのとれた万能型。勇者と呼ぶにふさわしい活躍を見せてくれます。
例外として挙げた2に関しては、冒険の途中で仲間となる2人を含めたパーティーメンバー全員が勇者の血を引く者たちで、能力もそれぞれに個性があります。そのため三位一体で勇者、と位置付けられると言えそう。
鳥山明氏がデザインしたそれぞれのイラストも、剣や盾を構え、実に勇者らしい出で立ち。特に3の、冠にツンツン頭の勇者は、ドラゴンボールの悟空を思わせる同氏の真骨頂。ドラクエにおける勇者と言えば、3の主人公をイメージする方もきっと多いはずです。
およそ4年間の間に新作を4本立て続けに出す、というスピード感は現代では到底考えられませんが、RPGというジャンルはまだまだ黎明期。「勇者」を中心に据えた王道のスタイルで、ドラゴンクエストというブランドのイメージを決定づけました。
■ ドラクエ5から風向きが変わる 主人公の息子が勇者
スーパーファミコンで発売された、ドラゴンクエスト5から、勇者の扱いが少しずつ変わっていきます。
まず、主人公は勇者ではなく、物語の途中まで身分も不明という人物。旅の目的も魔王を討伐するためではなく、父親と共に行方不明の母親を探すため、とこれまでとは大きく異なる設定でした。
しかしながら、ストーリーが進行するにつれ、徐々に明らかになる真実。そして、成年へと成長したのち、天空人の子孫である妻との間に生まれた子どもこそが、作中における勇者というまさかの展開には多くの方が驚いたことでしょう。
また5と言えば、主人公の結婚相手を選べることも大きな特徴のひとつ。いわゆる「ビアンカ・フローラ論争」は発売当初から白熱しており、それにより勇者である子どもの髪色が変化するのもポイントのひとつでした。
この頃になると、ドラゴンクエストと類似したRPGは次々に発売され、いわゆる王道スタイルに目新しさがなくなります。三世代にわたる「家族」を物語のキーワードとし、必ずしも主人公が勇者という位置付けである必要はない……そんな新たなスタイルを模索したうえでの開発だったのかもしれません。
代わりに主人公は「モンスターを仲間に出来る」という、後のシリーズに多大な影響をもたらすことになる、非常に尖った特技の持ち主でしたがね。