墓地行政に関する都道府県の事務が自治事務となった00年の地方自治法一部改正に伴い、大分県も条例で、「墓地埋葬法第10条第1項」に従って都道府県知事の「墓地、納骨堂又は火葬場の経営許可」の権限を各町村が処理すると定めた。これを受けて日出町も「日出町墓地、納骨堂、火葬場の経営に関する条例」を制定し、墓地行政を行っていて、「協会」の許可申請はこれに基づく。

日出町での問題のポイントは、第10条の墓地の設置場所が「高燥で、かつ、飲料水を汚染するおそれのない場所であること」という基準。が、日出町は「墓地が水を汚染するとまでは言えない」とし、担当職員は「人間の土葬では貴金属や油のように汚染するようなものが流出することはなく、水質汚染になるとまでは言えないと考えている」と答弁している。溜池により近い修道院の事情は前述した通りだ。

しかし日出町長は墓地設置の計画が浮上して約3年間、第4条1項に基づく事前協議を続けて、許可を行わなかった。その理由は「経営許可を受けようとする者は、近隣住民から墓地の経営計画について、公衆衛生その他の公共の福祉の観点からの意見の申出があった場合は、当該申出をした者と協議し、これに誠実に応じるよう努めなければならない」との条例の文言だった。が、それが漸くクリアされ、「協会」と「住民」が今般合意に至ったということ。

筆者も、「日本人慰霊塔」を残すための高雄市政府との交渉で痛感したことだが、彼我の宗教観や習俗の違いを先ずは互いに尊重することが必要だ。その上で、現地の法の定めるところに従い、双方が歩み寄ることが求められる。これらを乗り越えて、日出町では「協会」と「住民」が合意した。そこは元来「寛容」な日本人のこと、温かく見守りたいものだ。