<事例2c>産経新聞 2019/2/14

■「がっかり」だけではなかった 桜田五輪相発言全文

競泳の池江璃花子選手の白血病公表について、桜田義孝五輪相が「本当にがっかりしている」などと語ったことが問題になっているが、桜田氏の発言には「治療に専念して、元気な姿を見せてほしい」と気遣う言葉もあった。(中略)

記者:きょう、競泳の池江選手が自らが白血病であることと、しばらく休養することを発表しました。大臣として、これについての受け止めをお願いします。

桜田義孝五輪担当大臣:正直なところ、びっくりしましたね。聞いて。本当に。病気のことなので、早く治療に専念していただいて、一日も早く元気な姿に戻ってもらいたいというのが、私の率直な気持ちですね。

記者:競泳の中ではですね。

桜田大臣:本当に、そう、金メダル候補ですからねえ。日本が本当に期待している選手ですからねえ。本当にがっかりしております。やはり、早く治療に専念していただいて、頑張っていただきたい。また元気な姿を見たいですよ。そうですね。

記者:大臣はこれまで、池江選手の活躍をどのようにご覧になられてましたか。

桜田大臣:いやあ、日本が誇るべきスポーツの選手だと思いますよね。われわれがほんとに誇りとするものなので。最近水泳が非常に盛り上がっているときでもありますし、オリンピック担当大臣としては、オリンピックで水泳の部分をね、非常に期待している部分があるんですよね。一人リードする選手がいると、みんなその人につられてね、全体が盛り上がりますからね。そういった盛り上がりがね、若干下火にならないかなと思って、ちょっと心配していますよね。ですから、われわれも一生懸命頑張って、いろんな環境整備をやりますけど。とにかく治療に専念して、元気な姿を見せていただいて、また、スポーツ界の花形として、頑張っていただきたいというのが私の考えですね。

記者:最後に一言だけ。池江選手にエールを送るとしたらどんな言葉を。

桜田大臣:とにかく治療を最優先にして、元気な姿を見たい。また、頑張っている姿をわれわれは期待してます、ということです。

この全文を読めば、櫻田大臣は池江選手の病状を深く心配し、池江選手が治療に専念して元気になることを何度も何度も繰り返し願っていたことがわかります。文脈から推察すれば、桜田大臣の「がっかりした」発言は、実力もあり日本国民からも大きな期待をされていた池江選手が活躍できないことを気の毒に思う気持ちをつたない言葉で表現したと考えるのが蓋然的です。

また「盛り上がりが若干下火にならないか」発言は「五輪担当相として」との断りを入れた上での水泳競技の発展を心配する発言であり、朝日新聞が指摘する「国威発揚」とは全く無関係の内容です。過去の歴史が示すように、スポーツ競技の発展の背景には、競技者の目標となる優れた選手の存在があることは事実です。スポーツ振興を重要な用務の一つとする五輪担当相が会見でこの点に触れることはむしろ合理的であり、逆に大臣が個人的感想を語るだけの会見など不必要です。

結論から言えば、朝日新聞をはじめとするマスメディアは、言葉を切り取る情報操作を行うことで、あたかも櫻田大臣が池江選手の病状を心配せずに金メダルのや国威発揚だけを心配しているかのように印象付けました。彼らは池江選手の気の毒な状況を政権批判に悪用したのです。

<事例3>こんな人たち

<事例3a>朝日新聞 2021/07/01

■批判者に反撃「こんな人たち」コロナ危機、安倍氏の代償

2017年7月1日夕の東京・JR秋葉原駅前。都議選は翌日に投開票を控えていた。この年の都議選で、安倍はヤジを避けるように支援者が多い小学校体育館で演説を続ける。秋葉原は唯一の街頭演説だった。

安倍が到着すると、「安倍辞めろ!」の声が起こる。合わせて横断幕が揺れた。聴衆の多くは横断幕で安倍が隠れたからか、その場を離れた。演説を正面から見られる「一等地」にできた空白に、安倍に批判的な聴衆が一斉に集まった。一方、近くには安倍の支持者も多くいた。

演説を始めると、批判の声は大きくなる。それが闘争心に火をつけたのか、安倍は横断幕を揺らす一団を指さして言った。

「こんな人たちに負けるわけにはいかない」

支持者は日の丸の小旗を振りながら「そうだ」と賛同の声を上げた。しかし、テレビやSNSでこの場面が拡散されると「総理大臣は国民と戦う立場じゃない」「あなたがバカにしている『こんな人たち』も、あなたが守らねばならない国民なんです」などと安倍への批判が広がった。

朝日新聞をはじめとするマスメディアは、2017年都議選の選挙応援演説で安倍自民党総裁が「こんな人たちに負けるわけにいかない」と発言したことを、ことあるごとに繰り返し徹底的に批判してきました。これこそ典型的な言葉の切り取りの事案です。このとき実際には、安倍自民党総裁は次のように述べています。

<事例3b>東京都議選 自民党応援演説 2021/07/01

安倍晋三自民党総裁:皆さん、あのように人の主張の訴える場所に来て演説を邪魔するような行為を私たち自民党は絶対にしません。私たちはしっかりと政策を真面目に訴えていきたいんです。憎悪からは何も生まれない、相手を誹謗中傷したって、皆さん、何も生まれないんです。こんな人たちに、皆さん、私たちは負けるわけにはいかない。都政を任せるわけにはいかないじゃありませんか。

マスメディアが言うこの時の「批判の声」とは「組織的な選挙演説妨害の声」に他なりません。日本のような言論の自由が完全に確保された国において、政治に対する批判は言論で行うのが論理的です。

それに対し、「安倍辞めろ」という標語を繰り返し大声で叫んで選挙演説を実力行使によってかき消す組織的な行為は民主主義を冒涜する選挙妨害に他なりません。安倍自民党総裁は、首相としてではなく公党のリーダーとして、批判する国民ではなく選挙妨害する集団を「こんな人たち」と呼んで正当に批判したに過ぎません。

朝日新聞をはじめとするマスメディアは、この安倍自民党総裁の発言を切り取り悪魔化しました。彼らは民主主義の敵である選挙妨害集団を擁護して正当化したのです。

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