「サービスサイトがGoogleアルゴリズムのアップデートで3/1のセッション数に。」 ここから私は、BtoBマーケティング未経験ながら、ひとりマーケターとしてマーケティング組織を立ち上げ、2年ほどで月300件のリードを獲得できるようになりました——。

そう語るのは、法人向けデジタルマーケティング支援事業をてがけるナイル株式会社デジタルマーケティング事業部 マーケティングユニット・大澤心咲氏。

この成果を機に、マーケティング予算は当時の4倍になり、今では正社員3名、業務委託2名で外注先4社と共に売上増加に取り組むマーケティングチームを形成することに成功しています。

そして書籍を発売してからは、“マーケティング組織の立ち上げ方法を聞きたい”といった問い合わせも増えているといいます。

今回は、そんなナイル株式会社・大澤氏より、マーケター採用の状況、孤軍奮闘するひとりマーケターがチームをつくるまでにやるべきことについて、ご寄稿をいただきました。

マーケター求人の状況

Webマーケターの求人数の伸び率は2017年から2年間で241%(※)と需要が高まっています。

2020年以降はコロナ禍をきっかけに対面営業、飛び込み営業、展示会などが難しい状況が約2年間続き、さらに“オフィスに電話をしても人がいない”というケースも多かったため、対面営業がメインだった中小企業などもWebマーケティングの強化をせざるを得ない状況となりました。

※出典:日経クロストレンド「2017年4~6月から19年4~6月までの求人数の伸び」

マーケター求人が増え続ける理由

マーケターの求人が増加傾向にある理由はいくつか考えられます。マーケター業務の中でも販売促進に的を絞り、求人増加の背景を解説します。

まず1つ目は、業務の細分化が進んでいることです。これはB2CとB2Bのどちらにも共通していると感じます。細分化の背景にはデジタルマーケティングの普及が挙げられます。

また、B2Bの分野では、THE MODEL(ザ・モデル)という考え方が徐々に普及しており、インサイドセールスという形で、営業とは異なるアプローチが取られています。

例えば、電話でお客様とコミュニケーションをとり、関係を築くといった対応です。インサイドセールスをマーケティングに含めるかどうかは組織によって異なりますが、マーケティング組織の一貫として位置づける企業もあります。

さらに、マーケティングオートメーションツールやCRM、SFAなどのさまざまなツールが存在しており、それぞれのツールを効果的に活用する業務だけでも、ツールごとに業務の細分化が進んでいる状況にあると考えられます。

2つ目の要素は、細分化された業務を統合し、適切な戦略を考えることができる人材が求められるようになったことです。例えば、認知を高めるためにはメディア掲載やイベント企画、話題性のあるSNS投稿など、多様な方法があります。

同様に、問い合わせを増やす方法もセミナーを行うのか、テレアポを行うのか、DMを送付するのか、などさまざまです。

これらの手法を統合し、マーケティング戦略の方向性を描ける人材が必要とされています。しかし、そのようなスキルを持つ人材は意外と少ない現状もあります。全体の戦略を見据え、施策を立案できる人材が求められています。

3つ目の要素は、デジタルマーケティングが普及することで、さまざまなデータを分析できるようになったことです。

デジタルマーケティングを実践している方々は納得されると思いますが、最初からすべてのデータを完璧に把握できる組織はほとんど存在しないでしょう。

データを活用できる組織の構築や設定、データ計測ができるようにするためのオペレーション変更など、これらのタスクも時間がかかり、人材が必要になります。

4つ目の要素は、データを活用できる体制が整ったら、次にそのデータを分析し、何かを導き出す能力が求められることです。データ分析には非常に時間がかかることが多く、膨大なデータを扱う場合、データの確認だけで数日を費やすこともあります。

定量データだけでなく、定性データも分析する必要がありますが、定性データはExcelなどで関数を使って変化の分析を行うのが難しいため、時間がかかることが多いです。

このようなデータ分析のスキルも、人材に求められる要素の1つとなっています。特にデータ分析は商品開発や商品の改善、集客に繋がるアイデアが生まれる可能性を秘めているため、非常に重要な役割を担います。

5つ目は個別化の重要性です。 顧客のニーズに合わせた個別化されたマーケティング戦略が重要視されるようになっており、その実現に向けたマーケターの求人数が増えています。

個別化について衝撃的だったのはモノタロウさんです。 モノタロウさんはTwitterで話題になっていたため、私で裏どりができているわけではないですが、チラシがお客様ごとに最適化されているのではないか、という話があります。

ある方が「 この届いたチラシが自分が検索したことのある商品ばかりのような気がする」「自分自身に最適化された商品のチラシが届いているんじゃないか」とツイートしました。

そのツイートに対して何人かの方がリプライをしていて、 「確かに自分が買ったことある商品の部品がチラシに載っている」「 自分が検索したことがある商品の情報がチラシにまとまっている」といったことを発言しておられました。

ツイッター上で複数の方が自分に届いたチラシはこんなものでした、と投稿しているのを見ていると、ひとりひとりにカスタマイズしたチラシが送付されている可能性があると考えられます。

このようなことはB2Bの場合でも行われています。 B2Bの場合、企業規模に応じてインサイドセールスのトーク内容を変更したり、過去にお客様がダウンロードしていたカタログの商材に合わせてDMの送付内容を変えたりすることも以前から行われています。

また、一度でも商談したことがある企業の担当者に電話をする場合は、当然ながら過去の商談の記録をさかのぼり、1社1社異なるトークで電話対応することになります。

6つ目の要素はユーザーがインターネットで情報収集をしてから購買行動する商材が増えていることです。例えばB2B商材であっても購買担当者はインターネットで情報収集をしている傾向が分かり始めています。

インターネットで情報収集できるため、B2Bであっても57%の購買の意思決定が営業商談前に決まっているというデータもあります。

出典:The Digital evolution in B2B Marketing
https://www.thinkwithgoogle.com/_qs/documents/677/the-digital-evolution-in-b2b-marketing_research-studies.pdf

このような状況を考慮すると、マーケターにできることが非常に増えているため、求人数の増加が発生していることが分かります。