筆者はこの深刻な問題をネタにして言葉遊びをしたいわけではない。性加害を認めたとしか読めない、読みようがないリリースを出してしまうジャニーズ事務所の壊れたガバナンスが、リリースにそのまま表れているということだ。
上記のように26日に公表された公式リリースはもちろん、14日の公式リリースも改めて確認をすると矛盾だらけであまりにボロボロであることが分かる。14日の時点でいつの間に性加害を認めたのか?と驚くような表記まである。
公表されたリリースの内容は多数報じられているが、文章や問答の矛盾と問題点を詳細に説明・分析しているメディアは見当たらない。ジャニーズ事務所をまともに取材をするメディアが無い状況で、現在手に入る最も重要な資料であるにもかかわらずだ。
筆者はウェブメディアの編集長を10年、経済メディアでの執筆と執筆指導も10年間継続し、広報向けのセミナーも行っている。そんな「文章のプロ」「情報発信のプロ」としての立場から、芸能ネタでも喜多川氏の個人的なスキャンダルでもなく企業の不祥事として、ジャニーズ事務所の公式リリースから読み取れる問題を紐解いてみたい。
繰り返される矛盾した回答。14日に謝罪動画と同時に公表した公式コメントでは、BBCの告発番組とカウアン・オカモト氏の告発会見について、「事実であれば」と但し書きをつけた上で「極めて深刻な問題である」「事実確認をしっかり行う」と回答している。
告発は事実か? という問いには問題が無かったとは思っていない、しかし喜多川氏がすでに亡くなっているので確認ができない、事実と認める・認めないと言い切ることは難しいと回答している。以下の通り、これらの回答では事実認定を保留している。
『BBCの番組報道、またカウアン・オカモトさんの告発について、どのように受け止めているのか? 事実であるとすれば、まず被害を訴えておられる方々に対してどのように向き合うべきか、また事務所の存続さえ問われる、極めて深刻な問題だと受け止めました。 あらためて事実確認をしっかりと行い、真摯に対応しなければならないと思いました。』
『BBCの番組報道、またカウアン・オカモトさんの告発は事実か? 当然のことながら問題がなかったとは一切思っておりません。加えて会社としても、私個人としても、そのような行為自体は決して許されることではないと考えております。 一方で、当事者であるジャニー喜多川に確認できない中で、私どもの方から個別の告発内容について「事実」と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではなく、さらには憶測による誹謗中傷等の二次被害についても慎重に配慮しなければならないことから、この点につきましてはどうかご理解いただきたく存じます。 とは言え、目の前に被害にあったと言われる方々がいらっしゃることを、私たちは大変重く、重く受け止めております。』