メリットのない消費者
では消費者はどうか。
指定価格は、どこで買っても価格が同じ。値引き交渉もなし。実質「定価」の復活だ。パナソニックのいう「適正な価格」――おそらく高値――で固定されるため、価格面のメリットはない。
「消費者良し」となるかは、パナソニックの商品開発次第だ。
消費者が求めるものしばらく前の初夏のこと。家電量販店で購入したエアコンの取付工事の段階で、
「お宅には、取り付けられないよ」
と言われ、返品する羽目に。部屋の作りが特殊だからだという。他の量販店でも断られ続け、最終的に対応してくれたのは商店街の電気屋さんだった。
店主に勧められたのは、量販店で買ったのと同じ機種。だが、説明の丁寧さが全然違う。なぜ販売スタッフが設置工事まで行うのか。なぜ他店より時間をかけるのか。工事次第でエアコンの耐用年数が大きく変わる、という説明に納得する。当日は、店主含む3人の店員さんが、数時間かけて作業してくれた。10年以上経つが、故障・トラブルは一度もない。今年の夏も安心して使うことができる。
消費者が求めるのは、こういった安心感ではないか。故障しない。長く使える。安全である。安心すれば、価格にも納得できる。作るだけではなく、売るだけでもなく、売った後のことも、ぜひ考えてほしいと思う。

パナソニック プレスリリースより
【注釈】 ※ 滅失(めっしつ):なくなること。使い物にならなくなること。 毀損(きそん):こわれること。 瑕疵担保(かしたんぽ)責任:傷物(欠陥品) を売ったり作ったりしたときに負う責任のこと パナソニック株式会社 中長期戦略 2022年6月2日
【参考】 「えげつない」ヤマダが変身、パナソニックの家電戦略をのんだワケ:日経ビジネス電子版 パナソニック、家電の価格を販売店に指定…売れ残りの返品を受け入れる代わり:地域ニュース : 読売新聞 パナソニック、家電2割で価格指定 取引見直し1年で倍増:日本経済新聞 高齢化進む「街の電器屋さん」 後継者探し支援…パナが担当者1000人(2/2ページ) – 産経ニュース 中村邦夫「幸之助神話」を壊した男 森一夫/著 日本経済新聞社 街の元気屋さん 街を元気にプロジェクト/著 PHP研究所 ニッポンの明かりのような店 街を元気にプロジェクト/著 PHP研究所 パナソニック決算資料 他