官民の価値観のすり合わせが政策を前に進める
このように政策の窓は大きく開かれています。民間企業や、NPOの側でよい政策の提案があれば受け入れられる素地がありますが、そのためには民間サイドの提案の理由や背景について官僚側が納得することが必要です。ところがこれは結構難しい。
民間の考え方と官僚の考え方は結構違う部分があるからです。飛び切りの政策案をもって官僚とコミュニケーションをとったもののうまくいかなかった民間企業の方からは
・社会が便利になるよいアイデアを官僚が採用しない ・民間のスピード感が官僚にない
なんて嘆きを聴くこともあります。
これらの印象をもたらす原因は、端的に言えば、民間団体と官僚に価値観の違いがあるからです。そしてその違いは民間企業等が取り扱う「商品」と政府が取り扱う「政策」の性格の違いから生まれています。
<政策の特徴:代替性がない> 政策と商品の根本的な違いを一言でいえば、
・商品は企業も顧客もお互いを選べる。 ・政策は政府も国民もお互いを選べない。
ということです。
サラリーマンの楽しみの一つであるランチを例に考えてみましょう。ラーメン屋に入れば味噌、豚骨、しょうゆと自分の好みに合わせてスープやトッピングを選ぶことができますし、その店の味がいまいちであれば、他のラーメン屋に行くこともできます。なんならラーメン屋でなくてもいろんな料理屋が街にはあふれています。時には「節約のために食べない」という選択をとることもできます。
このような選択肢の中から欲しいものを納得して買うのが普通です。つまり、買い手は売り手を選ぶことができるのです。あまり好きでない商品は意図的に買わないこともできます。
売り手も顧客を選ぶことができます。売上が見込めない地域では、商品を販売しないこともできますし、個別の店単位では過去にクレームをつけてきた客だったり、あまりにも失礼な客は、迷惑な客として購入を拒否したり、入店を拒んだりすることもできます。利益を出すという最終目的のもと、企業は顧客を選ぶことができるのです。