戦争を冷静に見ているヨーロッパの人々

戦場となっているヨーロッパの主要国の人々は、ロシア・ウクライナ戦争の推移を冷静に観察しているようだ。ロシアのウクライナ侵攻から1年経った頃に実施された世論調査の結果がここにある。

One year on: European and American attitudes to the war in Ukraine(You Gov)

このグラフを見ればすぐに分かる通り、フランスを除き、どの国でも半数以上の人たちが、1年後もウクライナとロシアが戦争を行っているだろうと答えている。さらに注目すべきは、ロシアがウクライナから1年後に撤退していると予測する割合は小さく、また、ロシアがウクライナを支配するとの回答はもっと少ないのである。

我が国では、プーチンはウクライナを国家として認めておらず、時代錯誤の帝国主義的な「植民地戦争」を行っているとの言説が広く拡散されているようだ。しかし、ヨーロッパの人々の中で、ロシアがウクライナを支配するだろうと予測している人は、10%前後しかいないのである。要するに、ロシア・ウクライナ戦争は、今後も両軍による一進一退の攻防が続くだろうとの見方が大勢なのである。

外交交渉と戦争の犠牲

戦争の霧という不確実性は、その予測を難しくするが、多くのヨーロッパの人たちの予測が正しいとするならば、今年中にウクライナがロシアに勝利して、全占領地を奪還できる可能性は低いということになるだろう。

もっともありそうなシナリオは、今後もウクライナ軍とロシア軍が押したり引いたりしながら「消耗戦」を続けることである。その結果として、現在とあまり変わらない膠着状態のもとで、ウクライナとロシアが「停戦交渉」をせざるを得なくなった場合、その間に失われた犠牲は、どのように理解すればよいのだろうか。

リアリストの研究者やジャーナリストの拠点である「ディフェンス・プライオリティ」のメンバーである、ダニエル・デべリス氏(シカゴ・トリビューン紙コラムニスト)は、ロシアを懲罰する戦争の結末に期待するのは非現実的であるとして、外交による停戦交渉の必要性を以下のように強く訴えている。

(広島で開催された)G7では、ゼレンスキーの平和の方程式について大取引がなされた。しかし、はっきりさせておきたい。この『公式』は、交渉の原則というよりも、ロシアの全面撤退やロシア高官の戦争犯罪裁判など、ロシアに対する降伏条件のリストである。ここに中道はない。Zの立場は “ロシアが負ける “だ。その理由を知るのは難しくない。ロシア軍は戦争犯罪を行い、ウクライナの都市(マリウポリ、バフムート)を破壊し、領土を併合している。しかし、外交プロセスを開始するという観点からは、Zの『方式』は、既に死亡しているものである。キーウの今後数ヶ月の焦点は、ロシアの戦線をさらに東に押しやることだろう。しかし、膠着状態が続き、外交が重大な選択肢と見なされ始めたら、Zの方式を変えなければならないだろう。そうでなければ、話し合いは始まらないだろう。