不正会計の防止には「すぐバレる」環境づくりがカギ

不正会計の防止には、徹底した内部統制の整備や監査人の独立性の確保が必要です。また、不正を行った場合、「すぐにバレる」と「バレるのでやっても無駄」という環境づくりが重要です。

このためには、従業員の教育・啓発やホットラインの設置、内部通報制度の整備などが求められます。

従業員が不正行為を目撃した場合に、匿名で報告できる内部通報制度を整備することで、不正の早期発見につながります。実に不正の多くがこの内部通報がきっかけで明らかになっています。

会計システムなどの整備ができてないのは論外として、特に内部監査などが閲覧可能な状況をつくれていないシステムでは不十分です。

さらに、今後、経理・財務部門の人手不足が深刻化していくと、高度な会計処理が要求される会社では、意図しないヒューマンエラーなどによる不適切会計が増加してしまう可能性が考えられます。

どの会社においても“対岸の火事”とは考えず、あらかじめ防止策を講じておくことが必要でしょう。

内部統制は「業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセス」とされ、職務分掌や業務の効率化によって確立されていきます。

ただ、内部統制を確立するだけでは、不適切な会計処理の完全な防止にはつながりません。従業員同士が共謀した場合や経営者主導の場合などは、内部統制の効果が発揮されにくくなるためです。

このような原因による不適切会計を防ぐために、トップ主導体制や決裁権を一人に集中させる体制をつくるのではなく、承認事項には複数の人を介入させるなどして、社内間で取引業務を定期的に照合できる環境を整えておきましょう。

また、不適切会計が発覚するきっかけが会社内部、すなわち内部通報者によって明らかになった場合にも、解雇などの不利益な扱いにならないように保護する対策が必要です。

ちなみに、不適切会計が発覚した場合、上場企業であれば、上場廃止や特設注意市場銘柄への移管などの措置がとられることがあります。刑事責任としては、違反者個人には懲役や罰金、会社には億単位の罰金が科せられる場合があります。また、株主からは代表訴訟を提起され、役員などが損害賠償を請求されることもあります。

従業員一人ひとりの意識改革や、内部通報システムの確立などは、抑止力として大いに機能すると言われています。不適切な会計処理が会社に与えるダメージや個人責任を問われる可能性などの認識を社員一人ひとりに持ってもらうために、定期的に研修などを行うのもいいでしょう。

不適切会計は、会社の存亡に関わる大きな問題に発展しかねないリスクの一つです。不正を看過しない体制や従業員一人ひとりのプロ意識を醸成することで、最悪の状態になる前にリスクを回避できるはずです。