公務をクビになった彼らは軍服を着用することは許されなかったのですが、出席は可能でした。

これにはがっかりしていた人々が多く、戴冠式当日も聖職者や周りの人々がこの2人には挨拶をしなかったり、非常に厳しい視線を投げかけていたのが目立ちました。おもいっきりイギリスらしい仕草が発揮されていました。

遠回しに「あんたなんなん、嫌いやわ」と言っているわけです。テレビ中継でもわかるほどでしたから、現場ではかなり厳しかったのではと推測いたします。

そして当然チャールズ王とカミラ妃の長年の不倫、離婚、そしてダイアナ妃の悲劇的な死の影響もあります。

メディア時代の申し子であったようなダイアナ妃の死は、ハリウッドのスターやエルビス・プレスリーの死と並ぶような歴史的な出来事であり、80−90年代を代表するような悲劇でした。

イギリスの人々はこの悲劇をまだ昨日のように覚えており、その原因となったのがチャールズ王だと認識しているのです。

ところが戴冠式で王冠を被ったのはチャールズ王と元々不倫相手だったカミラ妃でした。まるで安っぽいソープオペラの一場面のようだと感じた人が少なくなかったでしょう。

そして戴冠式後のバッキンガム宮殿でのバルコニーでの国民への挨拶にはなぜかチャールズ王とは血が繋がらないカミラ妃の孫達が同席していたのです。これには大変ショックを受けた国民が少なくありませんでした。

王室は公的なものであるはずで、神の代理として人々に奉仕するという目的があるのに、チャールズ王はある 意味王室を私的なものにしてしまったのです。

戴冠式で繰り返された、

「神は王を守りたもう」 「王は神に奉仕する」

というフレーズが実に白々しく聞こえたのではないでしょうか。

国王自身が神に対しての神聖な誓いを立てた結婚を最初から無視し、堂々と不倫をやり、年若い妻を苦しめ、結果的に死に追いやってしまったのです。

イギリスも伝統的な人々というのは王室というのはただの血族ではなく、国としての統合を象徴するもの、シンボルであるという意識を持っています。

バッキンガム宮殿前に2つあるお土産屋さんには多くの王室グッズが揃っていますが、戴冠式直前であってもグッズの半分以上はエリザベス女王に関するものです。

淡いピンク色の美しい茶器や女王様の写真をあしらったタオルなどが並んでおり、王室のコアなファンである女性たちには大人気で手にとって眺めている方が大勢いました。エリザベス女王はその死後も人々の心を掴んでいるのです。

ところがチャールズ王のグッズは、非常に種類も数も少なく、手に取っている方も少ないのです。王室の先行きを暗示しているような印象を受けました。