王室離れする伝統的支持層
3点目に現在の王室に対する不信感が国民の間で高まっているというのがあります。
私は実際、戴冠式の数日前に郊外やロンドンの中心、バッキンガム宮殿の前などに行ってみたのですが、エリザベス女王の葬儀の時は大違いでした。
葬儀のときに大勢見かけた真面目な感じの中年以上のイギリスや欧州大陸、旧植民地の女性達が実に少なかったのです。
イギリスの大陸欧州も王室のファンのコア層は50代以上の女性です。
特に保守系で経済的に比較的安定した人々で、身なりが割とキチンとしていて地味だが秩序を重視する方々。ところが今回はそのような方々がバッキンガム宮殿の周りにはあまりいなかったのです。葬儀の際は、このような方々がおり、私は周りの人々とおしゃべりしてすぐに友達になったのです。
とても品がよく感じの良いインドの方、イタリア、 フランス 、イギリス、ジャマイカ、 アメリカなどの人々です。
遠くから飛行機でやってきた方も多くエリザベス女王に最後のお別れをしたい、素晴らしい方だったということを次々と述べておりました。
そこには エリザベス女王に対する深い尊敬の念を感じたのです。
ところが今回の戴冠式ではどうでしょう。
まずバッキンガム宮殿の周りで徹夜していた人々は、どちらかというとヤンキー系の人々で、家族連れで来ており、通行人の迷惑関係なしに巨大なテントを道路に張って数日間住んでいるのです。
戴冠式は始まっていないのに、アルコールも入っており泥酔している人もいました。パーティー気分なのか、頭にユニオンジャックの帽子をかぶったり、全身に国旗をまとって酒を飲みながらの大宴会です。
どちらかというと国王や王室に対して尊敬を示すというより、単にバカ騒ぎしたいので来てみた、という印象を受けました。要するにちょっと 荒い地域の花火大会状態です。
小学生や中学生の子供達もいましたが学校は休みではないので、授業を1週間近く勝手に休んで野宿しているのでしょう。学校側はこういう欠席を歓迎はしませんし、罰金が存在することもあります。
さらに驚くべきことに、バッキンガム宮殿の前では、自分で勝手に作成した王冠のオブジェを持ってきて宣伝しまくっている人、絵を書いて周りの人に見せまくっている人など、自分のプロモーションや商売に熱心な人々もおりました。
良い意味で自由、悪い意味では無秩序です。
日本だったら眉をひそめそうな人だらけですが、周りにいる人間もパーティー 気分なので気にしていないどころか、一緒に大騒ぎです。
彼らにとって王室はインスタグラマーや、面白いYouTuberと同じような扱いなので、大騒ぎして自分を宣伝することができれば良いわけです。
そして主役は自分であり、自分が楽しむことが重要で、秩序や尊敬ではないわけです。
こんな雰囲気なので、エリザベス女王の葬儀の時に見かけたようなコアな王室ファンが、この場を避ける気持ちがよくわかりました。厳かさ、権威、歴史、そういったものは無視されていました。
伝統的な王室ファンの人々が今回の戴冠式を完全に祝福気分でないのは、チャールズ王がここ最近のスキャンダルにきちんと対応してこなかったというのが大きいでしょう。
今回の戴冠式には、児童の性的虐待で有罪となったアメリカの元富豪エプスタインと親しく、彼が性的虐待を行っていたカリブ海の島に滞在していたアンドリュー王子と、エリザベス女王やフィリップ殿下が危篤なのにもかかわらず暴露Podcastや暴露本の出版を辞めなかったハリー王子が参加を許されていたのです。