けが人続出のピンチで重見にまわってきたチャンス

危機感のためか今2023シーズンに向け、福岡はこのポジションに明確なテコ入れを実施。前&中村コンビを維持しつつ、期限付きながら元日本代表のMF井手口陽介を獲得。これでボランチは3枚看板になった。田邉や平塚、若手のDF森山公弥などもおり、懸念点はついに払拭されたかに思われた。

ところが井手口は3月4日、移籍後初先発を飾った第3節柏レイソル戦で右足関節外果骨折を負い全治3か月。森山も同月8日のJリーグYBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)アルビレックス新潟戦で左膝外側半月板損傷を負い、全治6か月と長期離脱が決定した。

リーグ戦では再び前&中村コンビがフル稼働し、場合によっては田邉が試合終盤を締める形で勝ち点を伸ばすことができた。ただし、ミッドウィーク開催のルヴァン杯までこの2人を起用するのは難しい状況。そんなチームのピンチは、3月31日に特別指定選手となったばかりの重見にチャンスをもたらした。

認定からわずか5日後、重見はルヴァン杯第3節の鹿島アントラーズ戦でベンチ入りすると、後半20分から途中出場。第4節の鹿島戦では初スタメンで初のフル出場、チームも2-1の勝利を飾った。

アビスパ福岡 MF重見柾斗 写真:椎葉洋平

活躍の場はルヴァン杯からリーグ戦へ

4月後半、チームにとって恐れていた事態が起こる。4月23日、J1第9節の北海道コンサドーレ札幌戦で中村が負傷交代。中盤のフィルター役を1人欠いたチームは、第10節の川崎フロンターレ戦で1-3の敗戦。内容としては非常に悪いわけではないが、失点が重なった。その姿に、昨シーズンの勝てない時期が頭をよぎった。

中3日で迎えた第11節FC東京戦。前とコンビを組んだのは、この試合がJリーグ初先発となる重見だった。対戦相手のFC東京やスペイン2部リーグのCEサバデルなどに所属していた経験豊富な田邉らを差し置いての抜擢だった。

重見はこの試合で、ルヴァン杯と同様に落ち着いたプレーを披露。プレッシャーを受けても持ち前の判断力で冷静に展開し続け、決定的なパスも複数供給した。チームはFC東京をわずかシュート2本に抑え、1-0で勝利。重見は好印象だけでなく、走行距離がチーム最多、スプリント回数もチーム最多タイという数字を残した。


アビスパ福岡 MF重見柾斗 写真:椎葉洋平