新古書チェーン「ブックオフ」の一部店舗で、大学別の過去の入試問題集、いわゆる「赤本」の陳列棚の隣に成人向け商品の陳列棚が並んでおり、小売店の陳列形態として公序良俗に反するとの指摘もあがる一方、SNS上では「むしろ配慮」「マーケティングが上手」といった声もあがるなど、さまざまな反応が寄せられている。このような陳列方法に何か意図はあるのか、運営会社に聞いた――。   「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」の創業者として知られる坂本孝氏が1991年に創業したブックオフコーポレーション(現ブックオフグループホールディングス<GHD>)は、当時は存在していなかった新古書店というビジネス形態を生み出し、チェーン展開。目利きが古本を一点一点精査して買取価格を決める古書店とは異なり、書籍の傷の有無など状態を見てアルバイト店員でも簡単に買取価格を決められるシステムを確立し、客は手軽に書籍を売れる一方、新刊のベストセラー本などを安く購入できる点などが好評を博し、瞬く間に急成長を遂げた。

 2004年には東京証券取引所の第1部(当時)へ上場を果たしが、07年には坂本氏がリベート問題の責任を取って退任。10年代に入るとアマゾンやヤフオク!、メルカリといったECサイト、オークションサイトなどで手軽かつ安価に中古品が手に入るようになった影響もあり、ブックオフの業績は徐々に低迷。16年3月期からは3年連続で最終赤字となり、一時は経営危機も叫ばれるほどの苦境に陥った。

 だが、19年3月期には黒字転換を果たし、コロナ禍でも業績を拡大。23年5月期決算では、売上高は前期比7%増の980億円、営業利益は27%増の22億円、連結純利益は10%増の16億円の見通しとなっている。

「GEOを展開するゲオHDが、ゲーム機やスマホ、衣類、家電など幅広い商材のリユース事業で好調だが、ブックオフも同様の戦略に転換したことが功を奏している。加えて、住宅街の店舗では児童書を、ビジネス街の店舗ではワイシャツなどの男性用衣類やビジネスパーソン向け消耗品を充実させたりと、画一性を緩めて地域密着型の店舗づくりに取り組んでいる点なども成功している」

 実際、現在のブックオフGHDの事業別売上をみてみると、相変わらず書籍が全体の約3割を占め主力であるが、アパレル、貴金属・時計等、トレーディングカードがそれぞれ約1割となっており、そのほか、家電、携帯電話、スポーツ用品、アウトドア用品なども一定の比率を占めている。

 店舗構成にも変化がみられる。従来型のブックオフに加え、トレカ・ホビー売場を拡張し家族連れが楽しめるスペースを備えた「BOOKOFF SUPER BAZAAR(ブックオフ スーパー バザール)」、三越など大手百貨店内の富裕層向け店舗「ハグオール」、ジュエリーオーダー&リフォーム スペシャリティストア「aidect(アイデクト)」、トレカ専門店「Japan TCG Center」など、多彩な形態の店舗を展開している。

 実際に東京都内のある店舗を訪問してみると、書籍のほかに中古のスマホやゲームソフト、CDやDVDなど多彩な商品ラインナップとなっており、平日昼間にもかかわらず多くの客の姿がみられた。また、学習参考書コーナーとしては約10棚が割り当てられ、それなりに大きなスペースを占めており、そのうち棚1つ分を赤本コーナーが占めていた。