東南アジアでの業務拡張を急ぐニトリ

 2024年3月期、ニトリは売上高が9,320億円、純利益は前期比5.15%増の1,000億円になるとの予想を公表した。収益の増加のためにニトリは国内以上にアジア新興国市場、特に、東南アジア諸国で出店数を急速に増やす。

 2022年2月期末と2023年3月期末の出店計画を比較するとニトリは中国大陸、マレーシアなどでの出店を増やす。2024年3月期の重点課題の一つとして、中国では約400名の新卒採用も計画している。若手従業員を現地で採用することによって、実店舗(リアル)とネットの両面での販売体制が強化される。ニトリはこれまで出店してこなかった国や地域にも進出する。タイ、ベトナム、インドネシアにはそれぞれ5店舗、フィリピンには2店舗が出店される計画だ。中長期的に、世界経済の中でも東南アジア諸国の経済成長率は高く推移するだろう。所得の増加を背景に、家具需要も伸びると予想される。香港と韓国にも初めてニトリは出店する。国内では出店の増加や店舗の改装によって一定の収益を得る。獲得した資金や人材を急速に東南アジア諸国などに再配分して収益力を引き上げる戦略が始動している。中期的に、東南アジア諸国などでの新規出店数は国内を上回るだろう。

 東南アジア地域では、イケアも出店戦略を強化している。2023年2月15日の時点で、イケアは世界全体で460店舗を運営している。うち79店舗がアジア地域(わが国を含む)だ。イケアにとっても東南アジア市場攻略の重要性は高まっている。2021年11月にはフィリピンで初めての店舗がオープンした。注目されたのは、その規模だ。床面積は6万8,000平方メートル(東京ドーム1.5個分)、出店時点でイケアにとって世界最大の規模だった。フィリピンの店舗には、ネット通販に対応するための倉庫機能も併設した。イケアにとってフィリピンは同国のみならず、東南アジア新興国の家具、日用品、さらには週末のショッピング体験などの需要を取り込むための重要プロジェクトに位置付けられる。そうした取り組みはさらに強化されるだろう。