サッカーの考察に必要なのは
ー競技、選手、チーム、監督の本質を伝えることに心血を注いできたレオさんが考える、サッカーの批評や解説に必要なものは何ですか。日本のサッカーメディアへの提案や提言があればぜひ。
レオ:物事の真理を知る力、人間の真理を知ろうとする力ですね。これまでの話は、サッカーに関して共通点を見出すという話でしたよね。それによってサッカーの解像度が上がっていきます。これに加えて人間の解像度を上げる。サッカーは人間がするものなので。
例えば、記者会見で怒りやすい監督は試合中の修正が下手なんですよ。なぜかと言うと、冷静になれないから。意地悪な質問をされたときに怒っていたら記事にされて、それが燃え広がって自分への逆風が強まる。冷静な監督は、意地悪な質問に面白く返して、それによってサポーターからの信仰心を勝ち取る。これでいい流れに持っていけるんです。
要は「風が吹けば桶屋が儲かる」です。Aが起きたら、B、C、D、Eまで考えられるから、Aの行動をしっかり考えようみたいな。人間という観点で注目すると、監督の選手交代の意図が分かりやすいですね。「あのときに怒っちゃって、この試合もこんな采配して、本当に悪いポイントを修正していない。だから次の試合も良くならないだろうな」という真理が見えてくる。
それで本当にその監督が解任されて「レオさん、何であのとき分かったんですか」というオカルト的な話になるんです。僕の予想が当たるのは、人間とサッカーの真理の解像度が、サッカーの話をする人のなかでは高い部類に入るから。この両方を勉強していく感じですかね。
ー長年サッカーという競技を探究されてきて、今になって分かったサッカーの魅力や醍醐味を教えて下さい。
レオ:一人では行けない場所に行かせてもらえる経験の有り難さですね。今一番それを感じているのは、監督業のなかで選手がゴールを決めたり、良い守備をしたり、試合に勝ったとき。自分ひとりでは、ここまで感動できないですから。危機を乗り越えた先の喜びも醍醐味です。
ー現時点で考え得る、レオさんの究極的な目標を教えて下さい。
レオ:シュワーボのクラブW杯制覇です。そのときにその大会があったらですけど。僕らがJリーグに上がるうえで一番大変なのは、スタジアムや練習場など、設備面でJリーグ100年構想の規定を満たせるようなクラブになること。そういう環境を用意できるのは、資本的なバックがあったとき。
今後僕は監督としてよりも、オーナーとしての能力を伸ばさないといけない。基本的にスポーツ界では、オーナーはお金を出す人と思われているんですけど、全てはリーダーであるオーナーで決まるので。いろいろな企業の社長さんとか、Jクラブのオーナーの方の足元にも及んでいないので頑張ります。
ーこの書籍を手にとってくれるであろう、サッカーを愛する皆さんへのメッセージ、そしてご自身の活動に関する、今後の抱負をお願いします。
レオ:ネガティブな意味ではなく、僕はこの書籍を遺書だと思ってます。人生は映画と違って、ここというクライマックスがあるわけではないですよね。「あそこがクライマックスだったな」と後で気づくわけで。なので、僕はいつもそう思って生きるようにしています。
今まで出したこと無いようなフルスロットルの本を出します。僕が事故かなんかで亡くなったときに「これ書いた人凄いな」と思われるような本にしたいと思い、妥協せず(株式会社KADOKAWAの)笠原さんにわがままを言って、こだわりを込めた箇所もあります。読む人が肩に力を入れる必要はないですけど、そのくらいの気持ちで書いたので、ぜひ手にとって頂けたら嬉しいです。
(了)