「教員は働かされ放題」
その教員採用試験の倍率低下の根底にあるのが、公立学校教師の労働環境の悪さだ。21年に名古屋大学の内田良教授らが全国の公立小学校の教員466名、公立中学校の教員458名を対象に行った調査によれば、1カ月の平均残業時間は100時間以上におよぶという。また連合総研が22年に発表した報告によれば、教員の勤務日の労働時間は平均12時間7分で、週休日の労働時間を合わせると1カ月の労働時間は293時間46分であり、時間外勤務は上限時間の月45時間を上回り過労死ラインを越えているとしている。
ちなみに公立学校の教員は、休日勤務手当や時間外勤務手当を支給しない代わりに給与月額の4パーセントを「教職調整額」として支払うことが法律で定められており、事実上、残業代は支給されない。これが「教員は働かされ放題」といわれるゆえんだ。ある県の公立中学校教員はいう。
「8時台に朝のホームルームがあるので7時半には出勤して、15時過ぎに授業が終わると部活動の指導が18~19時くらいまでかかる。その後も会議や校内イベントの準備、定期テストの問題作成や採点、会計などの雑務をこなし学校を出る。帰宅して、そこからやっと翌日の授業の準備に取りかかり、あっという間に夜11時になる。このほか、いじめなどのトラブルが起きれば保護者対応なども加わってくる」
公立学校教員の労働時間については規定がないわけではない。給特法では、残業時間の上限について月45時間、年360時間と定められている。
「上限を超えると教育委員会から問題視され、報告書を提出させられたり医師の面談を受けるよう指示されたりと、余計な負担が増える。なので、学校が教育委員会へ教員の勤務時間を過少報告するようなことも行われている。結果として、文科省は教員の労働実態を把握できていない。休日にも部活動が当たり前のように行われているが、指導する教員はその休日出勤分は基本的には無給。
すべては、『教員という職務は特殊だから残業代は払わない』と定めているおかしな法律である給特法が元凶。教員は科目の授業に専念し、雑務や部活動には専門の担当職員を置くという、普通の会社なら当たり前の業務分担の発想を取り入れない限り、教員という職業の不人気は永遠に解消されない。そもそも、ただの教員である私たちが、加害者と被害者、さらにその両方の親がからむ複雑なイジメ問題の対処を任せられても困る。そんな教育は受けていないので知識はないし、裁判官のようにどちらが悪いかを判断・決定する権限もない」(同)