コミュニケーション能力が必要な職種の増加
コミュニケーション能力が必要な職種が増加していることも大きい。日本は「ものづくり大国」というイメージが強く、製造業の就業者数が多い印象をお持ちの方が多いかもしれない。だが、実際には高度成長の主役だった製造業の就業者数はすでに全就業者数の6分の1まで減少している(『日本経済入門』)。
このように、産業構造が第二次産業から第三次産業に、つまり製造業からサービス業にシフトしたことによって、職場不適応に陥る人が増えた。製造業では目の前の仕事に黙々と取り組めば評価され、対人関係にそれほど煩わされずにすんだのだが、サービス業ではコミュニケーション能力や客の要求に臨機応変に対応する柔軟性が要求されるからだ。
製造業の求人自体が減っている状況では、製造業に固執してはいられず、サービス業に就職するしかないが、コミュニケーション能力や柔軟性を持ち合わせていないと、しばしば軋轢を生じる。その結果、どこの職場にも適応できず、困り果てて精神科を受診し、発達障害と診断される方が増えている。このように発達障害の事例が増え、注目を浴びるようになった背景に、製造業からサービス業へのシフトがあることは否定しがたい。
コミュニケーション能力にせよ柔軟性にせよ、努力で何とかできる部分もないわけではないが、やはり持って生まれた素質による部分がかなり大きい。だから、そういう適性を持ち合わせていない方が「努力しても報われない」と感じるのは仕方がないともいえる。