DV、虐待…不動産執行とは?

正確には「不動産執行」と呼ばれ、住宅ローン返済や借金返済の滞りに起因する債権者からの強制執行申立が認められた際、債権の弁済や充当目的の競売にかけるべく債務者の所有する、不動産(土地・建物)を取り上げに行くというもの。
もちろん即日取り上げで債務者を追い出してしまうということはなく、いわば最後通告を行うのだが、我々が訪ねてきたその日から競売に向けた歯車はゆっくりと回り始める。そして約半年後には出ていかざるを得ない状況に債務者は直面するのだ。
訪ねてくる不動産執行人には2~4種類の役割を持つ人間がいる。私も以下に紹介する役職の1つに関わり、日々の業務をこなしている。

【執行官】
管轄の裁判所から派遣される不動産執行のリーダー的存在。債務者がここに至るまでの経緯や状況を把握し、必要書類を不備なく収集及び作成し現場でも指揮を執る。債務者と最も接触する回数の多い役職だ。
【不動産鑑定士】
債務者が権利を持つ不動産の情報を精査及び調査し、最終的には現況確認でその価値を判断する。言うまでもなくこの査定額が競売物件の入札開始価格の元となる。物件に最も深入りすることになり、競売事件の要ともなる役職だ。
この2つの役職を持つ人間が揃えば、基本的には不動産執行は無事執り行われるのだが、そうとも言えない事例もある。債務者の雲隠れや連絡断ち、室内を施錠したままの自殺や立て篭もりといったケース。この場合には更に2つの役職を持つ人間が加わることになる。
【鍵屋】
どんなに固く施錠された物件でも迅速に解錠しなければならないという高いスキルが求められる役職。多くの入札業者がありながらも現場に残れるのはごく少数で、少人数が管轄を跨いだ広域をカバーしている。故に情報通。
【立会人・見届人】
無人の室内に立ち入るまでの流れに問題がないか、入室後の窃盗や傷つけなどがないかを確認する役職。ほぼ全ての人員が元警察官という経歴を持つ。
このような面々が揃うといよいよ差し押さえも最終局面。
室内への立ち入り調査は管轄によってルールも異なるが、概ね以下の通り。