騒動の原因はエマニュエル大使の錯覚

ところが今年3月に、アメリカのエマニュエル駐日大使など(日本を除く)G6とEUの駐日大使7人がLGBT法案成立を求める書簡を岸田首相に出した。5月12日には、都内の15の駐日大使と一緒に「LGBTQI+の権利を支持する」という動画メッセージを発表した。

日本の国内問題にここまで介入する彼の真意はよくわからないが、この動画には大使館のウェブサイトからもリンクが張られている。これは「G7までにLGBT法案を成立させろ」というアメリカ政府の意思表示だろうが、ネット上の反応を見る限り逆効果だった。

エマニュエル大使がマスコミ各社のインタビューで強調しているのは、LGBT法案より同性婚の法制化だ。いま国会で問題になっていない同性婚を求めるのは奇妙である。

確かに日本以外のG7諸国はすべて同性婚を認めているが、日本では憲法24条の「婚姻は両性の合意のみに基いて成立する」という規定があるので、民法では同性婚を認めていない。

これが憲法違反かどうかについては判決がわかれているが、同性カップルを夫婦として戸籍に入れるには民法改正が必要である。憲法と矛盾する民法改正を法制審が答申することはありえないので、これは立法論として成り立たない。

岸田政権は不当な外圧に屈服するな

エマニュエル大使はこれを混同し、日本の法制度をよく知らないまま「日本はLGBTの権利を認めないおくれた国だ」と思い込んでいるのではないか(彼は憲法24条には一度も言及していない)。

いずれにせよアメリカ大使館が日本にここまで露骨に内政干渉するのは異常であり、失礼である。LGBT法案の実害は少ないが、ここで外圧に屈してG7の前に成立させると、日本はアメリカの属国になってしまう。そんな緊急性もない。

12日の合同部会では、反対18人に対して賛成10人だったが、採決しないで部会長一任となった。これも全会一致が原則の自民党総務会では異例であり、このまま強行突破すると、首相の党内基盤もゆらぎかねない。岸田政権は成立を急がず、G7後に改めて議論すべきだ。

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