2つの施設「ソラノホテル」「ときと」の立ち上げ人
「もともとここは、戦前は陸軍の将校や戦地に赴く前の航空兵も利用し、戦後は料亭やレストランとして利用された場所です。地域の方にとっても思い入れがある場所なので、なくすのではなく、いかに生かせるかを考えました」
立飛HM取締役COO(最高執行責任者)の坂本裕之さんは、こう説明しながら続けた。
「(私も立ち上げに関わった)ソラノホテルを“動”とすれば、オーベルジュときとは“静”。対比するイメージです」
坂本さんの経歴も華やかだ。1980年に開業時の兵庫県神戸市「ポートピアホテル」のフレンチレストラン「アランシャペル」でキャリアをスタートし、長崎県の「ハウステンボス ホテルヨーロッパ」や「ホテルグランヴィア京都」(京都府京都市)、「ザ・ウインザーホテルズ インターナショナル」(北海道洞爺湖)などで総支配人を歴任。「京都センチェリーホテル」(京都市)では代表取締役専務を務めた。
もともと神戸市出身で、北海道以外は西日本のホテルでキャリアを積んだ人物が、東日本に招聘され、立川市で2つの宿泊施設を立ち上げたことになる。
「立川の都市格を上げるために上質なホテルを創ってほしい」と、デベロッパーから言われたという。
市の面積の4%を持つ“立川の大家”
ここでいうデベロッパーとは、前述の立飛HDだ。立飛という名前は前身の「立川飛行機」(後の立飛企業)に由来する。今から約100年前、1924年に航空機メーカーとして誕生し、戦前は陸軍向けに主に練習機を設計・製造・販売していた。
現在は不動産賃貸・開発が主力業務だが、これは戦後に米軍に接収されていた自社所有地が返還されていき、その後、デベロッパー業を強化して業態転換したためだ。
「立飛グループが所有する土地は約94万平方メートル+4万平方メートルあり、これは立川市の全面積の約4%に相当します」(坂本さん)
ちなみに、東京都心でアークヒルズや六本木ヒルズなどの開発を行ったのが「森ビル」だ。昭和時代に同名のビルを東京都港区中心に建て続けた同社は“港区の大家”ともいわれた。それに倣えば、「立飛は“立川の大家”」といえよう。
「『上質なホテルを創ってほしい』という要望を受けましたが、『地元のホテルと競争するな』『婚礼と宴会ビジネスはやってはならない』という条件もありました。その思いで進めて2020年6月8日に開業したのが『ソラノホテル』です」(同)
同ホテルの横顔は別の機会に紹介するが、宿泊料金も安くない3つ星ホテルだ。